ブラッディ・マンデイ 第01話
ネットに書(か)き込(こ)む人々(ひとびと)。
『今(いま)の日本(にっぽん)ってなんか変(へん)だよね』(JACK)
『みんな死(し)んじゃえばいいのに』
『今(いま)の日本(にっぽん)ってなんか変(へん)だよね』(YUKI)
TETSU『マジ、ムカつく奴(やつ)多(おお)すぎ!ぶつかっといて逆(ぎゃく)切(ぎ)れしたり、』
『こんな国(くに)滅(ほろ)んだ方(ほう)がいいんだ。
こどもの空(から)っぽな脳(のう)みそで』
『みんなの願(ねが)いはもうすぐかなうと思(おも)うよ』
クリスマスイブの夜(よる)、極寒(ごっかん)の地(ち)・ロシアでは、あるウイルス取引(とりひき)が
成立(せいりつ)していた…。
教会(きょうかい)でしょうか。
幼(おさな)い少女(しょうじょ)が男(おとこ)が女(おんな)にアタッシュケースを渡(わた)すのを見(み)ています。
〔約束(やくそく)の物(もの)だ〕(ロシア語(ご)で話(はな)す男(おとこ)の声(こえ))
〔やっと出会(であ)えた
これが私(わたし)達(たち)のキー〕(吉瀬(よしせ)美智子(みちこ)さん)
〔キー?〕
〔未来(みらい)の扉(とびら)を開(ひら)くの〕
〔使(つか)い方(かた)を誤(あやま)れば町(まち)ひとつ簡単(かんたん)に消(き)えるぞ〕
〔あなたには関係(かんけい)ないわ〕
そして二人(ふたり)はキスを交(か)わし・・・
彼女(かのじょ)が去(さ)ったあと、男(おとこ)がその場(ば)に倒(たお)れる。
男(おとこ)だけでなく、集(あつ)まっていた人々(ひとびと)は鼻血(はなぢ)を出(だ)し、咳(せ)き込(こ)み、次々(つぎつぎ)と
倒(たお)れていく。
誰(だれ)かがネットに書(か)き込(こ)む。
『ゆうべ神様(かみさま)のお告(つ)げがありました。
まもなくこの世(よ)に罰(ばつ)が下(くだ)される。
すべては一瞬(いっしゅん)で終(お)わる』
防護(ぼうご)服(ふく)を着(き)た捜査(そうさ)員(いん)が教会(きょうかい)内(ない)を調(しら)べる。
〔こちらにも生存(せいぞん)者(しゃ)いはいない模様(もよう)〕
〔水(みず)・・〕
被害(ひがい)者(しゃ)の女性(じょせい)を助(たす)けようとする捜査(そうさ)員(いん)。
〔何(なに)をしている〕
〔生存(せいぞん)者(しゃ)です〕
もう1人(にん)の捜査(そうさ)員(いん)は女性(じょせい)を射殺(しゃさつ)してしまう。
日本(にっぽん)・東京(とうきょう)
警視庁(けいしちょう)警備(けいび)局(きょく)考案(こうあん)特殊(とくしゅ)三(さん)課(か)、通称(つうしょう)「THIRD-i」
テリロズム対策(たいさく)機関(きかん)として、警視庁(けいしちょう)に設置(せっち)された
警備(けいび)局(きょく)直属(ちょくぞく)の実働(じつどう)部隊(ぶたい)である。
独自(どくじ)の調査(ちょうさ)権限(けんげん)を保有(ほゆう)し
その超(ちょう)法規(ほうき)的(てき)な活動(かつどう)により
警察(けいさつ)機構(きこう)内(ない)でも非公式(ひこうしき)とされている。
「ロシアの確認(かくにん)が取(と)れ次第(しだい)成田(なりた)をはじめ全(すべ)ての国際(こくさい)空港(くうこう)に、
レベル1発令(はつれい)を申請(しんせい)する。」と高木(たかぎ)竜之介(りゅうのすけ)(田中(たなか)哲司(てつし))
「ロシアのテログループのリストアップ、まだ出来(でき)ない?」
と宝生(ほうしょう)小百合(さゆり)(片瀬(かたせ)那()奈())。
「すみません。もう少(すこ)し掛(か)かります。」
「急(いそ)いで!」
「今度(こんど)はロシアさんだよ。慌(あわ)ただしいねー。
・・ね、聞(き)いてる?」と加納(かのう)(松重(まつしげ)豊(ゆたか))。
加納(かのう)を無視(むし)する南海(なんかい)かおる(芦名(あしな)星(ほし))
「愛想(あいそ)ないねー。」
「ウラジオストック上空(じょうくう)からの衛星(えいせい)写真(しゃしん)です。
全域(ぜんいき)が軍(ぐん)によって閉鎖(へいさ)されているようですが、
町(まち)が消(き)えてるんです。」と霧島(きりしま)(吉沢(よしざわ) 悠(ゆう))。
「町(まち)が消(き)えた!?」と苑(その)麻(あさ)局長(きょくちょう)(中原(なかはら)丈雄(たけお))。
「住民(じゅうみん)が・・一瞬(いっしゅん)にしていなくなっているんです。」
数(すう)ヵ月(かげつ)後(ご)
〔東京(とうきょう)であんたみたいないい女(おんな)と出会(であ)えるとはな
もっともっと君(きみ)の事(こと)を知(し)りたい〕
ロシア人(じん)の男(おとこ)は、女(おんな)(マヤ)がベッドから離(はな)れた隙(すき)に
彼女(かのじょ)のバッグからパスポートを取(と)り出(だ)して調(しら)べる。
そこへマヤが戻(もど)ってきた。
〔知(し)りたいからってせっかちな男(おとこ)は嫌(きら)い〕
〔お前(まえ)がロシアから持(も)ち込(こ)んだものは何(なに)だ
東京(とうきょう)で何(なに)をするつもりだ〕
銃(じゅう)を構(かま)えようとする男(おとこ)の胸(むね)に飛(と)び込(こ)むマヤ。
「ブラッディ・マンデイ。」
マヤは男(おとこ)を見(み)つめてそう呟(つぶや)き・・。
『最後(さいご)のキーは東京(とうきょう)に入(はい)った
まもなく東京(とうきょう)は消(き)える
この世(よ)の最後(さいご)の月曜日(げつようび)』
密売(みつばい)組織(そしき)の男(おとこ)から殺人(さつじん)ウイルスを手(て)に入(い)れた女(おんな)・マヤ。
彼女(かのじょ)の目的(もくてき)は日本(にっぽん)でウイルステロを起(お)こす事(こと)だった。
計画(けいかく)のキーワードは「ブラッディ・マンデイ」。
そして日本(にっぽん)にやってきた女(おんな)は、自分(じぶん)を追(お)ってきたロシアの諜報(ちょうほう)員(いん)を射殺(しゃさつ)し、
行方(ゆくえ)をくらましてしまう。
サードアイ
「ユーリ・アレクセイエフ。
この8ヶ月(かげつ)間(あいだ)、ロシア、ヤスリースクの事件(じけん)で潜(もぐ)らせていた情報(じょうほう)員(いん)。
彼(かれ)の体内(たいない)から、このチップが発見(はっけん)されました。」と高木(たかぎ)。
「そこに残(のこ)されていたメッセージによると、
ヤスリースクで何(なに)が起(お)きたかは依然(いぜん)不明(ふめい)。
ただしテロの可能(かのう)性(せい)あり!
次(つぎ)のターゲットは東京(とうきょう)と思(おも)われる。
結構(けっこう)は数日(すうじつ)以内(いない)。」と霧島(きりしま)。
「とにかく、ロシアで何(なに)が起(お)きたのか確(たし)かめないと。
ロシアの沖田(おきた)さんからその後(ご)どうよ?
何(なに)か新(あたら)しい情報(じょうほう)来(き)てる?」と加納(かのう)。
「来(き)てません。」と美姫(びき)。
「そう。てか愛想(あいそ)ないね!」
「・・・あの男(おとこ)なら出来(でき)るかもしれない。」と苑(その)麻(あさ)。
「・・・」黙(だま)り込(こ)む高木(たかぎ)。
「あの事件(じけん)の時(とき)の天才(てんさい)ハッカー。」
「ファルコン、ですか?」と霧島(きりしま)。
「ファルコンって・・」と小百合(さゆり)。
『最後(さいご)の血(ち)の祝祭日(しゅくさいじつ)はもうすぐだ』
「サードアイ」は、諜報(ちょうほう)員(いん)が残(のこ)した暗号(あんごう)の解析(かいせき)のため、
弥(わたる)代(だい)学院(がくいん)高等(こうとう)部(ぶ)に通(かよ)う高木(たかぎ)藤丸(ふじまる)(三浦(みうら)春(はる)馬(ば))に、
ロシア軍用(ぐんよう)施設(しせつ)のコンピューターへのハッキングを依頼(いらい)する。
藤丸(ふじまる)は、見(み)た目(め)はごく普通(ふつう)の高校生(こうこうせい)だが実(み)は"e;ファルコン"e;と呼(よ)ばれる
天才(てんさい)ハッカー。
これまでも高度(こうど)のハッキング技術(ぎじゅつ)で数々(かずかず)の不正(ふせい)を暴(あば)いていたのだ。
監視(かんし)カメラのついた部屋(へや)に連(つ)れてこられた藤丸(ふじまる)。
「久(ひさ)しぶりだね、藤丸(ふじまる)君(くん)。
あれから、3年(ねん)?」と苑(その)麻(あさ)。
「2年(ねん)です。」
「2年(ねん)かー。あー、そうかー。」
「俺(おれ)、最近(さいきん)は大人(おとな)しくやってますけど。」
「2年(ねん)前(まえ)まで君(くん)は伝説(でんせつ)のハッカーだった。
ファルコンというのが君(きみ)のネット上(じょう)での名前(なまえ)だった。
その正体(しょうたい)がただの中学生(ちゅうがくせい)だと知(し)った時(とき)我々(われわれ)は本当(ほんとう)に驚(おどろ)いたよ。
しかも、高木(たかぎ)さんの息子(むすこ)だったとはね。」と霧島(きりしま)。
2年(ねん)前(まえ)、伝説(でんせつ)のハッカーが自分(じぶん)の息子(むすこ)と知(し)った高木(たかぎ)は、
連行(れんこう)された藤丸(ふじまる)を思(おも)いきり殴(なぐ)りつけた。
「ファルコンの、力(ちから)を借(か)りたい。
東京(とうきょう)が、日本(にっぽん)が消(き)えてしまう。」と苑(その)麻(あさ)。
「ロシアの極東(きょくとう)で町(まち)がひとつ消(き)えた。
これと同(おな)じことがもうすぐ東京(とうきょう)で起(お)きようとしている。」と霧島(きりしま)。
「何(なに)が起(お)こったか君(きみ)に探(さぐ)ってもらいたいんだ。」と苑(その)麻(あさ)。
「この町(まち)にはロシアの重要(じゅうよう)な軍事(ぐんじ)施設(しせつ)がある。
そこのコンピューターに進入(しんにゅう)してもらいたい。」と霧島(きりしま)。
「君(きみ)なら出来(でき)るんじゃないかな。」と苑(その)麻(あさ)。
「俺(おれ)に犯罪(はんざい)を犯(おか)せって言(い)うんですか!?」
「犯罪(はんざい)なら2年(ねん)前(まえ)、君(きみ)はとっくに犯(おか)しているよね。
君(きみ)の力(ちから)で人(ひと)が救(すく)われるんだ。
なぜそれを使(つか)わないんだ。」
「断(ことわ)る。」
「ハハハ。もうよしましょうよ、局長(きょくちょう)。
こんなガキに何(なに)が出来(でき)ます。
これは子供(こども)の遊(あそ)びじゃないんだよ。
ねー、高木(たかぎ)さん!」と加納(かのう)。
別(べつ)の部屋(へや)でモニターを見(み)つめる高木(たかぎ)。
父(ちち)がどこかで見(み)ていると知(し)る藤丸(ふじまる)。
「君(きみ)も、君(きみ)の友達(ともだち)も、君(きみ)のきょうだいも、
みんないなくなってしまうんだよ。
東京(とうきょう)がなくなるんだ。」と苑(その)麻(あさ)。
「・・・俺(おれ)には関係(かんけい)ない。」
町(まち)を歩(ある)く藤丸(ふじまる)と、マヤがすれ違(ちが)う。
『ゆうべ神様(かみさま)のお告(つ)げがありました
まもなくこの世(よ)に罰(ばつ)が下(くだ)る
すべては一瞬(いっしゅん)で消(き)える
最後(さいご)のキーは東京(とうきょう)に入(はい)った
まもなく東京(とうきょう)は消(き)える
この世(よ)の最後(さいご)の月曜日(げつようび)
最後(さいご)の血(ち)の祝祭日(しゅくさいじつ)はもうすぐだ』
ここで、カメラはパソコンにこう打(う)ち込(こ)んだ人物(じんぶつ)、
またはメールを受(う)け取(と)った人物(じんぶつ)の視点(してん)となります。
事務所(じむしょ)でしょうか?
5人(にん)ぐらいの男性(だんせい)、そして女性(じょせい)、鳥(とり)かごのオウム、
その向(む)こうには金髪(きんぱつ)のがパソコンに向(む)かっています。
私立(しりつ)弥(わたる)代(だい)学園(がくえん)高等(こうとう)部(ぶ)
生物(せいぶつ)の授業(じゅぎょう)中(ちゅう)、隠(かく)れてパソコンのキーボードを叩(たた)く藤丸(ふじまる)。
「またエロゲ?」後(うし)ろの席(せき)のあおいが聞(き)く。
「うるさい。
お前(まえ)がうるさくすると日景(ひかげ)にバレるだろ。」
次(つぎ)の瞬間(しゅんかん)、日景(ひかげ)が目(め)の前(まえ)に立(た)っていた。
パソコン画面(がめん)をゲームに切(き)り替(か)える藤丸(ふじまる)。
「高木(たかぎ)、お前(まえ)このままじゃ留年(りゅうねん)だぞ。
ゲームなんかやってる場合(ばあい)か!」
「すみません・・」
授業(じゅぎょう)が終(お)わると、日景(ひかげ)は安斉(あんざい)真子(しんこ)に声(こえ)をかける。
「安斉(あんざい)、あとで私(わたし)の部屋(へや)に来(こ)なさい。」
「・・・」
日景(ひかげ)の部屋(へや)を訪(おとず)れる真子(しんこ)。
「失礼(しつれい)します。」
「実(じつ)は父兄(ふけい)からうちの生徒(せいと)が駅前(えきまえ)のコンビニでバイトしているのを
見(み)かけたという苦情(くじょう)があってね。
君(くん)じゃないのか?」
蝶(ちょう)の標本(ひょうほん)を作(つく)りながら日(にち)景(けい)が言(い)う。
「いえ・・」
「君(きみ)にそっくりだったらしいんだけどなー。」
「・・・」
「君(きみ)だね。」
「すみません!
今月(こんげつ)はどうしても学費(がくひ)が払(はら)えなくて。」
「このままじゃ私(わたし)も立場(たちば)上(じょう)君(きみ)の退学(たいがく)を見逃(みのが)すわけにはいかない。」
「・・・」
日景(ひかげ)は真子(しんこ)の髪(かみ)に、そして体(からだ)に触(さわ)れ・・
「どうしたらいいだろうね。」
そう言(い)いながら服(ふく)を脱(ぬ)がそうとする。
日景(ひかげ)を突(つ)き飛(と)ばす真子(しんこ)。
「おいおい。いいのか?そんなことして。
いいのかな。」
真子(しんこ)は泣(な)きながら日陰(ひかげ)の部屋(へや)を飛(と)び出(だ)していく。
それを藤丸(ふじまる)が目撃(もくげき)し・・。
安斉(あんざい)真子(しんこ)の停学(ていがく)処分(しょぶん)が決(き)まる。
新聞(しんぶん)部(ぶ) 部室(へむろ)
「安斉(あんざい)真子(しんこ)は、両親(りょうしん)を亡(な)くして親戚(しんせき)に引(ひ)き取(と)られて生活(せいかつ)しているの!
学費(がくひ)や生活(せいかつ)費(ひ)のことで迷惑(めいわく)をかけたくなくて、
仕方(しかた)なくバイトをしていた。
それをいきなり停学(ていがく)だなんて!
絶対(ぜったい)に許(ゆる)すべきじゃないでしょう!」そう怒(おこ)るあおい。
「それで?今月(こんげつ)号(ごう)の新聞(しんぶん)でそれを取(と)り上(あ)げようって?」と立川(たじかわ)。
「そう!生徒(せいと)やみんなの世論(せろん)を盛(も)り上(あ)げれば、学校(がっこう)側(がわ)も考(かんが)えを
変(か)えると思(おも)うの。」
「規則(きそく)一点張(いってんば)りの学校(がっこう)のやり方(かた)は俺(おれ)も変(か)えていく必要(ひつよう)があると思(おも)う。
だけどあまり大(おお)げさに騒(さわ)ぎ立(た)てて逆(ぎゃく)に安斉(あんざい)を傷(きず)つけてしまうって
ことはないのか?」と九(きゅう)条(じょう)。
「それに下手(へた)すると、僕(ぼく)らが学校(がっこう)から睨(にら)まれるってこともあり得(え)る
わけですよね。」と立川(たじかわ)。
「そんなこと言(い)ってる場合(ばあい)じゃないでしょう!?
・・・ちょっと、高木(たかぎ)君(くん)聞(き)いてる!?」
「イテテテテ・・
俺(おれ)腹(はら)痛(いた)い・・ってわけで、さよなら。」
部室(ぶしつ)を飛(と)び出(だ)していく藤丸(ふじまる)。
「こら藤丸(ふじまる)!まだ話(はなし)し終(お)わってない!」あおいが叫(さけ)ぶ。
高木(たかぎ)家(か)
「ただいまー。」
「お兄(にい)ちゃん、お帰(かえ)り!」
藤丸(ふじまる)の妹(いもうと)・遥(はるか)(川島(かわしま)海(うみ)荷(に))が料理(りょうり)をしながら笑顔(えがお)で答(こた)える。
「今日(きょう)透析(とうせき)だったろ?大丈夫(だいじょうぶ)だった?」
「うん!いつものことだからね。」
「あれ?気合(きあい)入(い)りすぎ。」つまみ食(ぐ)いしようとする藤丸(ふじまる)。
「コラ!
お父(とう)さんね、今日(きょう)早(はや)く帰(かえ)ってこれそうなんだってさ!
一緒(いっしょ)にご飯(はん)食(た)べるの久(ひさ)しぶりじゃん。
だから」
「あんまり期待(きたい)しないほうがいいよ。
あいつが約束(やくそく)守(まも)ったことあったかよ。」
そう言(い)いつまみ食(ぐ)いする藤丸(ふじまる)。
「お父(とう)さんのこと、あいつなんて言(い)わないで。
あ、そうだ!
この前(まえ)お兄(にい)ちゃんからもらったゲーム、すっごく面白(おもしろ)かった!
ああいうの考(かんが)えるのってすごいよね!
売(う)れば大(おお)もうけなのに。もったいないよね。」
「いい子(こ)にしてたらもっと面白(おもしろ)いの見(み)つけてきてやるよ。
あ!
俺(おれ)は今(いま)からエッチな写真(しゃしん)とか見(み)なきゃなんないから、
絶対(ぜったい)部屋(へや)を開(あ)けんな!」
そう言(い)いニコっと笑(わら)うと、藤丸(ふじまる)は自分(じぶん)の部屋(へや)に向(む)かう
「最低(さいてい)!」
そこへ、電話(でんわ)が鳴(な)る。
「はい、高木(たかぎ)です。
お父(とう)さん!」
「ごめんな。急(きゅう)に仕事(しごと)が入(はい)って帰(かえ)れなくなった。
夕飯(ゆうはん)は藤丸(ふじまる)と済(す)ませてくれ。
すまん。」
「・・・わかった。」
「ほーら。言(い)ったろ!」
「うるさい!!」
藤丸(ふじまる)は寂(さび)しそうな妹(いもうと)の姿(すがた)をしばし見(み)つめ・・。
藤丸(ふじまる)は自分(じぶん)の部屋(へや)に入(はい)るとパソコンを広(ひろ)げ・・。
日景(ひかげ)に真子(しんこ)からのメールが届(とど)く。
『先生(せんせい)、お願(ねが)いします。
停学(ていがく)を取(と)り消(け)してくれるなら何(なん)でもします。
その証拠(しょうこ)に写真(しゃしん)を添付(てんぷ)しました。』
「何(なん)でもするね・・。」
うれしそうに呟(つぶや)きながら添付(てんぷ)写真(しゃしん)を開(ひら)く日景(ひかげ)。
『バカが見(み)る』ファルコンからの贈(おく)り物(もの)に、
「なんだ、これは!!」
「捕獲(ほかく)完了(かんりょう)!」
その後(ご)藤丸(ふじまる)は、日景(ひかげ)のパソコンにハッキングし
彼(かれ)が集(あつ)めた卑猥(ひわい)な画像(がぞう)を入手(にゅうしゅ)する。
翌日(よくじつ)の学校(がっこう)
生徒(せいと)たちが日景(ひかげ)を見(み)てクスクスと笑(わら)う。
職員(しょくいん)室(しつ)
「ひょっとして先生(せんせい)、まだご存知(ぞんじ)じゃないんですか?
夕(ゆう)べこんなメールが送(おく)られてきたんですけど。」
同僚(どうりょう)の教師(きょうし)に見(み)せられたメールには、
『バカを見(み)よ!』の文字(もじ)と、変体(へんたい)プレーをする日景(ひかげ)の動画(どうが)。
学校(がっこう)から逃(に)げ出(だ)そうとする日景(ひかげ)は、藤丸(ふじまる)とすれ違(ちが)う。
「バッカが、見(み)る!」
日景(ひかげ)は藤丸(ふじまる)に秘密(ひみつ)を暴(あば)かれたと気(き)づき・・。
『【お知(し)らせ】
長年(ながねん)に渡(わた)り、本(ほん)学院(がくいん)の発展(はってん)にご尽力(じんりょく)下(くだ)さった、
生物(せいぶつ)の 日景(ひかげ)潔(きよし)先生(せんせい)が退職(たいしょく)されることになりました。
後任(こうにん)の教員(きょういん)については現在(げんざい)未定(みてい)ですが、
生徒(せいと)諸君(しょくん)においては、安心(あんしん)して、引(ひ)き続(つづ)き高(たか)い目標(もくひょう)に向(む)かって
学習(がくしゅう)に励(はげ)むよう心掛(こころが)けて下(くだ)さい。』
『懲戒(ちょうかい)の減免(げんめん)
対象(たいしょう)者(しゃ):安斉(あんざい)真子(しんこ)(2年(ねん)A組(ぐみ))
内容(ないよう):停学(ていがく)取消(とりけし)』
「よかったね!真子(しんこ)!!」とあおい。
「神様(かみさま)っているのかも・・」と真子(しんこ)。
「そんなわけないでしょう。
僕(ぼく)はちょっとばかりパソコンには詳(くわ)しいので説明(せつめい)しますと、
多分(たぶん)誰(だれ)かが日景(ひかげ)のパソコンにウィルス入(い)りのメールを送(おく)りつけて
乗(の)っ取(と)ったんだ。
そいつは日景(ひかげ)の恥(は)ずかしい写真(しゃしん)を見(み)つけ出(だ)して、ネットに流(なが)した。」と立川(たじかわ)。
「誰(だれ)なんだろう、その人(ひと)・・
絶対(ぜったい)この学校(がっこう)のどっかにいると思(おも)うの。」と真子(しんこ)。
「うん。」とあおい。
「そうかな。
でもこれ、絶対(ぜったい)記事(きじ)になりますよね!」
3人(にん)の様子(ようす)を背後(はいご)から見(み)つめる藤丸(ふじまる)。
「藤丸(ふじまる)君(くん)は?何(なに)か知(し)らない?」と真子(しんこ)。
「え?」
「無駄(むだ)よ、こんなやつに聞(き)いたって!」といあおい。
「おい!こんなヤツって何(なに)だよ!
あおい、あとで覚(おぼ)えてろよ。」
藤丸(ふじまる)の隣(となり)にいた九(きゅう)条(じょう)が、じっと藤丸(ふじまる)を見(み)つめている。
「・・何(なん)!?」
「何(なに)にも。」
その帰(かえ)り道(みち)、藤丸(ふじまる)の前(まえ)に一(いち)台(だい)の車(くるま)が止(と)まる。
降(お)りてきたのは、サードアイの小百合(さゆり)と工藤(くどう)。
「またあんた達(たち)かよ!
あんた達(たち)と俺(おれ)は関係(かんけい)ないって言(い)っただろ!
いい加減(かげん)にしてくれよ!」
「そういうわけにはいかなくなったんだよね。
君(きみ)夕(ゆう)べ学校(がっこう)のパソコンに侵入(しんにゅう)したろ。」
「・・・」
「あれは犯罪(はんざい)だ!」
「・・・エヘヘヘヘ。」
笑(わら)って誤魔化(ごまか)し逃(に)げ出(だ)そうとする藤丸(ふじまる)を、小百合(さゆり)が確保(かくほ)。
「痛(いた)いって!」
「じゃあ大人(おとな)しく来(き)てくれるわね?」
サードアイ
「はめたってワケですよね!」と藤丸(ふじまる)。
「特殊(とくしゅ)三(さん)課(か)にだけ支給(しきゅう)される、モバイルパソコン。
君(きみ)へのプレゼントだ。」と苑(その)麻(あさ)局長(きょくちょう)。
「断(ことわ)ると言(い)ったら?」
「君(きみ)を逮捕(たいほ)するだけだ。」
「汚(きたな)ねー!」
「汚(きたな)いさ。それが我々(われわれ)の仕事(しごと)だ。
この国(くに)は、決(けっ)して平和(へいわ)なんかじゃない。
スパイやテロリストがウヨウヨしているんだ。
真(ま)っ当(とう)な手段(しゅだん)じゃ国(くに)を守(まも)れない。」
「・・・」
「君(きみ)の力(ちから)によって国(くに)が救(すく)われるんだ。
なぜそれを使(つか)わない!」
「・・・親父(おやじ)と話(はなし)をさせてもらっていいですか?」
屋上(おくじょう)
「すまんな、藤丸(ふじまる)。
ハッカーから足(あし)を洗(あら)えと言(い)いながら・・
いざとなるとこのザマだ。」
「初(はじ)めてだよ。犯罪(はんざい)を犯(おか)さなきゃ逮捕(たいほ)するなんて言(い)われたの。」
「・・わかった。もうこの話(はなし)はよそう。
局長(きょくちょう)には俺(おれ)から断(ことわ)っておく。」
「それは親父(おやじ)として?
それとも職務(しょくむ)として?」
「・・・」
「・・・もういいよ。
こんなことでもなかったら、俺(おれ)は一生(いっしょう)あんたのことを知(し)らずに
終(おわ)ってたよ。」
「もし何(なに)かあった時(とき)、俺(おれ)はお前(まえ)を最後(さいご)まで守(まも)ってやれないかもしれない。」
「わかってるよ!
いざとなったら、家族(かぞく)より国(くに)を守(まも)るんだろ?」
「・・・そうだな。
俺(おれ)はお前(まえ)らにも死(し)んだ母(かあ)さんにも、何一(なにひと)つ家族(かぞく)らしいことを
してやれなかった。」
「言()い訳(いわけ)はもういいよ。」
「藤丸(ふじまる)・・」
「引(ひ)き受(う)ける代(か)わりに、ひとつだけ条件(じょうけん)がある。
明日(あした)の夜(よる)は、早(はや)く家(いえ)に帰(かえ)ってきて欲(ほ)しい。
遥(はるか)のやつ、いっつもあんたの為(ため)に、料理(りょうり)作(つく)って待(ま)ってんだよ!
俺(おれ)はいいよ。
だけど、遥(はるか)にはもっと父親(ちちおや)らしいことをしてやってくれよ!」
「わかった。明日(あした)は何(なに)があっても早(はや)く帰(かえ)る。」
「約束(やくそく)だよ。」
「うん。」
タバコをくわえる高木(たかぎ)。
「止(と)めたんじゃなかったのかよ。」
藤丸(ふじまる)にそう言(い)われると、微笑(ほほえ)みを浮(う)かべながらタバコを吸(す)うのを
止(と)めるのだった。
教室(きょうしつ)
窓(まど)の外(そと)を見(み)つめながら、局長(きょくちょう)が言(い)っていたことを考(かんが)える藤丸(ふじまる)。
『君(きみ)も、君(きみ)の友達(ともだち)も、君(きみ)の兄弟(きょうだい)も、
みんないなくなってしまうんだよ。
東京(とうきょう)が無(な)くなるんだ。』
「東京(とうきょう)が消(き)える・・」藤丸(ふじまる)が呟(つぶや)く。
局長(きょくちょう)から渡(わた)されたパソコンを開(ひら)く藤丸(ふじまる)。
「朝(あさ)からエロゲ?その体力(たいりょく)をもっと他(た)のことに使(つか)ったら?」
あおいが声(こえ)をかけてくる。
「・・・」
「無視(むし)かよ!」
パソコンのキーボードを叩(たた)き始(はじ)める藤丸(ふじまる)。
ファルコンが飛(と)び立(た)つ。
「ターゲットボックスはロシアの軍事(ぐんじ)施設(しせつ)。
だが正面(しょうめん)から行(い)っても進入(しんにゅう)は不可能(ふかのう)だ。
まずはもっとセキュリティーの甘(あま)い、関連(かんれん)施設(しせつ)を狙(ねら)う。
パスワードを盗(ぬす)み出(だ)し、管理(かんり)者(しゃ)に成(な)りすまして、
さらに上(うえ)のレベルのボックスに入(はい)り込(こ)む。
これを繰(く)り返(かえ)してターゲットに近(ちか)づいていく。
相手(あいて)の監視(かんし)システムに感(かん)づかれたら、アウトだ。」
そんな藤丸(ふじまる)の前(まえ)に、女(おんな)・折原(おりはら)マヤ(吉瀬(よしせ)美智子(みちこ))が弥(わたる)代(だい)学院(がくいん)の教師(きょうし)として
姿(すがた)を現(あらわ)す。
「みんな聞(き)いてくれ。
ご家族(かぞく)の事情(じじょう)で急遽(きゅうきょ)お辞(や)めになった日景(ひかげ)先生(せんせい)に代(か)わって今日(きょう)から、
新(あたら)しい先生(せんせい)が、お前(まえ)達(たち)に生物(せいぶつ)を教(おし)えてくださる。
折原(おりはら)マヤ先生(せんせい)だ。」
「おーっ!」
「折原(おりはら)先生(せんせい)は、アメリカの大学院(だいがくいん)を出(で)ておられる。
専門(せんもん)は植物(しょくぶつ)学(がく)。
こんな偉(えら)い先生(せんせい)がこの学校(がっこう)に来(き)てくださるなんてお前(まえ)達(たち)!
相当(そうとう)運(うん)がいいぞ!
じゃあ先生(せんせい)、あとはよろしくお願(ねが)いします。」
「はい。
どうせあとで質問(しつもん)が出(で)ると思(おも)うので、最初(さいしょ)に言(い)っておきます。
現在(げんざい)彼氏(かれし)はいません。」
「おー!」
「好(す)きな男性(だんせい)のタイプは、花(はな)や木(き)が好(す)きな人(ひと)。」
「俺(おれ)オレ!」
「あとは、そうね。
お金持(かねも)ち!」
「なにそれ・・」とあおい。
「はいでは授業(じゅぎょう)を始(はじ)めます。
第(だい)二(に)章(しょう)まで終(おわ)っていると聞(き)いていますので、今日(きょう)から第(だい)三(さん)章(しょう)。」
あおいは藤丸(ふじまる)がマヤに見(み)とれていることに気(き)づき、
教科書(きょうかしょ)で思(おも)いきり彼(かれ)の頭(あたま)を叩(たた)く。
「あー痛(いた)!」
「何(なに)見(み)とれてんの!」
「どうしたの?そこ。」とマヤ。
「いえ・・」
藤丸(ふじまる)の教科書(きょうかしょ)の下(した)にサードアイのパソコンを見(み)つけるマヤ。
「えっと・・高木(たかぎ)藤丸(ふじまる)君(くん)。
これ、見(み)せて。」
「これはその・・」
「見(み)ないほうがいいですよ、先生(せんせい)。
どうせエッチなゲームですから。」とあおい。
「終(おわ)ったら、来(き)て。
はい、気(き)を取(と)り直(なお)して、授業(じゅぎょう)に入(はい)ります。」
サードアイ
「澤(さわ)北(きた)です。
うちの機密(きみつ)ファイルが、不正(ふせい)にコピーされた形跡(けいせき)があるんです。
持(も)ち出(だ)し禁止(きんし)のファイルのはずなんですが。」
「外部(がいぶ)からの進入(しんにゅう)か。」と高木(たかぎ)。
「いえ。それがどうやら、内部(ないぶ)の人間(にんげん)らしくて。
ログを解析(かいせき)すれば何(なに)かわかるかもしれません。」
「このことは誰(だれ)にも言(い)うな。内密(ないみつ)に調(しら)べろ。」
「内密(ないみつ)。わかりました。」
高木(たかぎ)は上司(じょうし)・沖田(おきた)に連絡(れんらく)する。
「沖田(おきた)課長(かちょう)。」
「今(いま)成田(なりた)からそちらに向(む)かっている。
高木(たかぎ)君(くん)、ロシアで気(き)になる噂(うわさ)を聞(き)いたぞ。
ロシアの一部(いちぶ)のヘッジファンドが、先物(さきもの)市場(いちば)で密(ひそ)かに日本(にっぽん)企業(きぎょう)を
売(う)りに出(だ)しているらしい。
近々(ちかぢか)日本(にっぽん)の株(かぶ)が暴落(ぼうらく)する前触(まえぶ)れだ。」
「テロの情報(じょうほう)が本物(ほんもの)だと?」
「ああ、恐(おそ)らく。
それから、ちょっと気(き)になるものを手(て)に入(い)れた。」
「沖田(おきた)さん、出来(でき)ればどこかで二(に)人(にん)きりでお会(あ)いできませんか?」
「というと?」
「うちの課(か)にスパイがいる可能(かのう)性(せい)が。」
学校(がっこう)、マヤの部屋(へや)
「座(すわ)って。」
「あの、先(さき)ほどはすみませんでした。」と藤丸(ふじまる)。
「私(わたし)、今(いま)から朝(ちょう)ごはんなの。
1人(にん)で食(た)べてもつまらないし。
一緒(いっしょ)にどう?
はい、どうぞ。」
「いいんですか?」
「うん、どうぞ。」
「じゃあ、いただきます。」
マヤの足(あし)や胸(むね)をつい見(み)てしまう藤丸(ふじまる)。
「そうだ。コーヒー入(い)れるね。
どうぞ。」
「ありがとうございます。」
「これ、こっちに置(お)いておくね。」マヤがパソコンを上(うえ)に置(お)く。
「はい。」
上(うえ)に置(お)かれたパソコンはずり落(お)ち、水槽(すいそう)に水没(すいぼつ)!
「あ!!」
「うわぁぁ!!」
「ごめんなさい!どうしよう・・」
あわてて水槽(すいそう)から取(と)り出(だ)すが、電源(でんげん)は付(つ)かなくなってしまった。
「ダメだ・・」
「大切(たいせつ)なデータとか入(はい)ってたんじゃない?」
「大丈夫(だいじょうぶ)です大丈夫(だいじょうぶ)です。
大切(たいせつ)なデータとかちゃんとバックアップ取(と)ってるんで。」
「必(かなら)ず弁償(べんしょう)するから。
本当(ほんとう)にごめんね。」
歩道(ほどう)を歩(ある)く高木(こうぼく)を見張(みは)る、ギターケースを抱(かか)えた男(おとこ)。
手(て)には蝶(ちょう)のタトゥー。
男(おとこ)の尾行(びこう)に気(き)づいた高木(たかぎ)は角(かく)を曲(ま)がり、捕(つか)まえようとするが、
姿(すがた)を現(あらわ)したのは沖田(おきた)だった。
沖田(おきた)が高木(こうぼく)に『罪(つみ)と罰(ばつ)』の文庫本(ぶんこぼん)を渡(わた)す。
「渡(わた)したいものはこれだ。」
本(ほん)にはディスクが挟(はさ)まれていた。
蝶(ちょう)の刺青(しせい)の男(おとこ)は、出(で)門(もん)という殺(ころ)し屋(や)だそうです。
町(まち)を並(なら)んで歩(ある)く二人(ふたり)。
「国際(こくさい)医科(いか)大(だい)の敷(しき)村(むら)教授(きょうじゅ)に話(はな)してくれ。
彼(かれ)ならこれが何(なに)なのかわかるはずだ。」
「至急(しきゅう)当(あ)たってみます。
スパイの正体(しょうたい)がわかるまでは、このことは内密(ないみつ)に。」
その直後(ちょくご)、沖田(おきた)は何者(なにもの)かに撃(う)たれてしまい・・。
「沖田(おきた)さん!!」
「隠(かく)れろ・・」
撃(う)たれた沖田(おきた)を木(き)の陰(かげ)に運(はこ)び、高木(たかぎ)は急(いそ)いで電話(でんわ)を入(い)れる。
「大変(たいへん)だ!沖田(おきた)課長(かちょう)が撃(う)たれた!
至急(しきゅう)応援(おうえん)をよこしてくれ!
場所(ばしょ)は、新宿(しんじゅく)西口(にしぐち)、」
沖田(おきた)が高木(たかぎ)の胸(むね)をつかむ。
「ブラック・・マンデイ・・」
西田(にしだ)はそう言葉(ことば)を残(のこ)し、絶命(ぜつめい)する。
「沖田(おきた)さん!沖田(おきた)さん!!」
鑑識(かんしき)が沖田(おきた)の遺体(いたい)を運(はこ)んでいく。
「野次馬(やじうま)がこれだよ。
おう!さっちょう(警察庁(けいさつちょう))だが公安(こうあん)だが知(し)らねーけど、
ウロチョロすんな、女(おんな)!
国家(こっか)を救(すく)う皆様(みなさま)が、こんな騒動(そうどう)起(お)こしちゃ困(こま)るんだよなー。」
捜査(そうさ)一(いち)課(か)の船木(ふなき)が、彼(かれ)とぶつかったかおるに絡(から)む。
「テメーもう一回(いっかい)言(い)ってみろよ!」
小百合(さゆり)がかおるを船木(ふなき)から引(ひ)き離(はな)し連(つ)れていく。
加納(かのう)が高木(たかぎ)の隣(となり)に座(すわ)る。
「足跡(あしあと)を残(のこ)さず敵(てき)を始末(しまつ)する。
恐(おそ)らく、どこかの軍隊(ぐんたい)で訓練(くんれん)を受(う)けた人間(にんげん)・・。」
「・・・」
高木(たかぎ)が立(た)ち上(あ)がると、加納(かのう)がかおる、小百合(さゆり)に合図(あいず)を送(おく)り、二人(ふたり)は高木(こうぼく)を捕(つか)まえる。
「何(なん)だお前(まえ)達(たち)!」
加納(かのう)は高木(こうぼく)をボディーチェックし、文庫本(ぶんこぼん)の中(なか)からminiSDを見(み)つける。
「これは?」
「沖田(おきた)課長(かちょう)から預(あず)かったものだ。私(わたし)のほうで調(しら)べる。」
「そういう訳(わけ)にはいかないんですよ。」
「何(なん)!?」
「高木(たかぎ)さん。あんた今日(きょう)ここで沖田(おきた)課長(かちょう)と会(あ)うことを誰(だれ)かに話(はな)しましたか?」
「・・・いや。」
「だったら沖田(おきた)課長(かちょう)を撃(う)った人間(にんげん)は何(なん)でこの場所(ばしょ)を知(し)ってたんですかね。」
「それは・・私(わたし)か沖田(おきた)課長(かちょう)のどちらかが、付(つ)けられていた。」
「だったらすぐ気(き)づくでしょう。
あんたも沖田(おきた)課長(かちょう)も素人(しろうと)じゃねーんだ。
あんた、沖田(おきた)課長(かちょう)を殺(ころ)そうとして犯人(はんにん)手引(てび)きしたんじゃねーのか?」
「何(なに)だと!?」
「機密(きみつ)ファイルをコピーした人間(にんげん)がわかったんです。
高木(たかぎ)さん、あなたです。」とかおる。
「そんなバカな!」
「来(き)てもらいましょうか。」
「・・・」
爆発(ばくはつ)と共(とも)に、蝶(ちょう)の刺青(しせい)の男(おとこ)がその場(ば)を立(た)ち去(さ)る。
学校(がっこう)のパソコンルームにいる藤丸(ふじまる)に、父親(ちちおや)から電話(でんわ)が入(はい)る。
教室(きょうしつ)を出(で)て話(はな)す藤丸(ふじまる)。
「もしもし?」
「悪(わる)いな、藤丸(ふじまる)。
今(いま)夜(よる)は帰(かえ)れそうにない。遥(はるか)に謝(あやま)っておいてくれ。」
「はぁ!?約束(やくそく)しただろう!」
「どうやらお前(まえ)をとんでもないことに巻(ま)き込(こ)んでしまったようだ。
今(いま)すぐハッキングは中止(ちゅうし)しろ!
続(つづ)ければ、お前(まえ)も狙(ねら)われる!
それから・・遥(はるか)を守(まも)ってやってくれ。」
人(ひと)ごみに紛(まぎ)れて逃(に)げながら高木(こうぼく)がそう話(はな)す。
「何(なに)言(い)ってんだよ。」
「もう会(あ)えないかもしれない。
だけどこれだけは信(しん)じてくれ。
俺(おれ)はいつまでも、お前(まえ)と遥(はるか)の味方(みかた)だ。
周(まわ)りが何(なに)を言(げん)おうとな。」
「もう会(あ)えないってどういうことだよ!」
「いいか、今(いま)から言(い)う言葉(ことば)をよく覚(おぼ)えておくんだ。
一(いち)度(ど)だけ言(い)う。」
高木(たかぎ)が男(おとこ)とぶつかる。蝶(ちょう)のタトゥーの男(おとこ)です。
高木(たかぎ)は人影(ひとかげ)の無(な)い路地(ろじ)に入(はい)り、藤丸(ふじまる)に言(い)う。
「必要(ひつよう)なときが来(く)るまで人前(ひとまえ)では絶対(ぜったい)に口(くち)にするな。」
「・・・」
「・・ブラッディ・マンデイだ。」
「・・ブラッディ・マンデイ・・。
父(とう)さん!」
電話(でんわ)は切(き)れてしまう。
『まもなくこの世(よ)に罰(ばつ)が下(くだ)る』
すべては一瞬(いっしゅん)で終(おわ)る』
関東(かんとう)特殊(とくしゅ)拘置(こうち)所(しょ)
新(あたら)しく配属(はいぞく)されてきた職員(しょくいん)(野間口(のまぐち)徹(とおる))に、上司(じょうし)が忠告(ちゅうこく)する。
「ひとつだけ言(い)っておく。
ヤツとは絶対(ぜったい)に言葉(ことば)を交(か)わすな。
交(か)わせば、お前(まえ)がヤツに操(あやつ)られる。」
担当(たんとう)の職員(しょくいん)は独房(どくぼう)の中(なか)で目(め)を閉(と)じたまま突(つ)っ立(た)っている、
神島(かみじま)(嶋田(しまだ)久作(きゅうさく))を見(み)つめ・・。
藤丸(ふじまる)が急(いそ)いで帰宅(きたく)すると、船木(ふなき)が待(ま)っていた。
「高木(たかぎ)藤丸(ふじまる)君(くん)だね。」
「・・はい。」
「警視庁(けいしちょう)のもんだ。
お父(とう)さんから連絡(れんらく)あった?」
「いえ。一体(いったい)何(なに)があったんですか?」
「実(じつ)はね、人(ひと)を殺(ころ)して逃(に)げちゃったんだよ。」
「・・それ何(なに)かの間違(まちが)いじゃないですか?だって父(ちち)は、」
「じゃあ連絡(れんらく)あったら、ここに連絡(れんらく)してもらえるかな。
警視庁(けいしちょう)捜査(そうさ)一(いち)課(か)の船木(ふなき)だ。こっちは伊庭(いば)。」
「ここで待(ま)ってても無駄(むだ)だと思(おも)いますよ。
親父(おやじ)はあまり家(いえ)に帰(かえ)ってこねーから。」
藤丸(ふじまる)はそう言(い)い、家(いえ)の中(なか)へ。
「お兄(にい)ちゃんお帰(かえ)り!
今日(きょう)はね、お父(とう)さんが好(す)きな肉(にく)じゃが作(つく)ったの。
味見(あじみ)してみて。」
「うん、美味(うま)い!」
「良(よ)かった!
お父(とう)さん、何時(いつ)くらいに帰(かえ)ってくるかな。」
「・・そうだな。もう少(すこ)しだと思(おも)うけど。」
「・・・」
「遥(はるか)?遥(はるか)・・」
「どうして嘘(うそ)つくの?お父(とう)さん帰(かえ)ってこないんでしょ!
さっき刑事(けいじ)さんが来(き)たの。
父(とう)さん・・人(にん)殺(ころ)して警察(けいさつ)に追(お)われてるんでしょ!」
そう言(い)い泣(な)き出(だ)す遥(はるか)。
「バカ。何(なに)言(い)ってるんだよ。何(なに)かの間違(まちが)いだよ。
父(とう)さんがそんなことするはずないだろ!」
「・・・」
「とりあえずそこ座(すわ)れ。」
遥(はるか)をソファーに座(すわ)らせようとしたとき、藤丸(ふじまる)はふと、
子供(こども)の頃(ころ)の家族(かぞく)の写真(しゃしん)に気(き)づき、それを手(て)に取(と)る。
フレームの裏側(うらがわ)に盗聴(とうちょう)器(き)が仕掛(しか)けられていた。
「どうしたの!?」
藤丸(ふじまる)は自分(じぶん)の部屋(へや)に行(い)き、盗聴(とうちょう)器(き)発見(はっけん)器(き)で他(た)に仕掛(しか)けられていないか
探(さが)していく。
家(いえ)の前(まえ)に止(と)められた車(くるま)では、船木(ふなき)が笑(え)みを浮(う)かべながら
ヘッドフォンで様子(ようす)を伺(うかが)っており・・。
パソコンのマウスの中(なか)、照明(しょうめい)など、部屋(へや)中(ちゅう)に盗聴(とうちょう)器(き)は仕掛(しか)けられていた。
それをひとつずつ外(はず)していく藤丸(ふじまる)。
「よくもこんなに仕掛(しか)けたもんだよな・・。」
インターホンが鳴(な)る。
モニターで確認(かくにん)すると、宅配(たくはい)業者(ぎょうしゃ)だった。
「パソコンラック、お届(とど)けにあがりました。」
「注文(ちゅうもん)してたんだった・・。」ほっとする藤丸(ふじまる)。
国際(こくさい)医科(いか)大学(だいがく)を訪(おとず)れるかおる。
沖田(おきた)が残(のこ)したデータを調(しら)べる敷(しき)村(むら)教授(きょうじゅ)(神保(じんぼ)悟志(さとし))。
「DNAの塩基(えんき)配列(はいれつ)だ。何(なに)かの遺伝(いでん)情報(じょうほう)だな。
あー、解読(かいどく)に時間(じかん)が掛(か)かりそうだ。
ところでー、高木(たかぎ)に何(なに)があったんです?」
バナナを食(た)べながら敷(しき)村(むら)が聞(き)く。
「は?」とかおる。
「私(わたし)に用(よう)があるときはいつもあいつが来(き)ていましたから。
座(すわ)ってください。
別(べつ)にね、あなたが来(き)たことが不満(ふまん)なんじゃないんですよ。
食(た)べますか?
むしろ歓迎(かんげい)している。こんな若(わか)くてきれいな女性(じょせい)が来(き)てくれたことに。」
「高木(たかぎ)は現在(げんざい)行方(ゆくえ)不明(ふめい)です。」
「え?」
「機密(きみつ)情報(じょうほう)を横流(よこなが)ししていた疑(うたが)いがあります。」
「横流(よこなが)し!?何(なに)かの間違(まちが)いでしょう!」
「高木(たかぎ)から連絡(れんらく)があった場合(ばあい)は、必(かなら)ずご連絡(れんらく)いただけますか?」
「・・わかりました。」
パソコンを操作(そうさ)しながら、藤丸(ふじまる)は父(ちち)にハッキングを中止(ちゅうし)するよう
言(い)われたことを考(かんが)えていた。
夜中(よなか)、眠(ねむ)れずに1階(かい)へ降(お)りていく遥(はるか)。
その時(とき)、パソコンラックのダンボールの中(なか)から人(ひと)が出(で)てきて、
台所(だいどころ)で水(みず)を飲(の)む遥(はるか)に忍(しの)び寄(よ)る。
口(くち)を塞(ふさ)がれ暴(あば)れる遥(はるか)。
藤丸(ふじまる)が気(き)づき、遥(はるか)を襲(おそ)う人物(じんぶつ)に飛(と)び掛(かか)る。
だが簡単(かんたん)に腕(うで)を締(し)め上(あ)げられてしまい・・。
それは、小百合(さゆり)だった。
「ロシアへのハッキングは直(ただ)ちに中止(ちゅうし)すること。
これ、サードアイからの正式(せいしき)な通達(つうたつ)。」
「・・親父(おやじ)にも同(おな)じことを言(い)われました。」
「連絡(れんらく)あったの!?じゃあ、」
「だから続(つづ)けることにしたんです。」
「・・・」
「この事件(じけん)の裏(うら)には、ロシアのことが絡(から)んでいるはずだ。
だったら逆(ぎゃく)にそれを突(つ)き止(と)めれば、親父(おやじ)の無実(むじつ)を証明(しょうめい)できるかも
しれない。」
「バカなことを言(い)わないで。
続(つづ)ければあなたの命(いのち)も危(あぶ)ないのよ。
この事件(じけん)、甘(あま)く見(み)ないほうがいいわよ。」
「あなた達(たち)には関係(かんけい)ない。
これはもう・・オレと親父(おやじ)の問題(もんだい)なんだ。」
「・・・」
「それに・・テロが起(お)きたら何(なに)百万(ひゃくまん)人(にん)も死(し)ぬんだろ?」
「・・・」
「今(いま)逃(に)げたって一緒(いっしょ)だよ。」
「さすが・・高木(たかぎ)さんの息子(むすこ)ね。
苑(その)麻(あさ)局長(きょくちょう)に許可(きょか)を取(と)るわ。」
とある研究(けんきゅう)施設(しせつ)。
「最後(さいご)のキーは受(う)け取(と)った。
こっちは祭(まつ)りの準備(じゅんび)で大忙(おおいそが)しだよ。」
「全(すべ)て順調(じゅんちょう)というわけですね。」
マヤが電話(でんわ)の相手(あいて)に言(い)う。
「マヤ以外(いがい)はね。
何(なに)のためにマヤをファルコンの所(ところ)に行(い)かせたと思(おも)ってる。
ファルコンはロシアの軍事(ぐんじ)施設(しせつ)の周(まわ)りをウロチョロしているぞ。」
「大丈夫(だいじょうぶ)です。サードアイから至急(しきゅう)された、彼(かれ)のモバイルマシンを
壊(こわ)しました。
それに、あの子(こ)はただの、」
「ハハハハハ。ファルコンを甘(あま)く見(み)ないほうがいいよ。
盗聴(とうちょう)マイクの存在(そんざい)もすぐに気(き)づいた。
ま、もっとも大事(だいじ)な情報(じょうほう)はもう手(て)に入(い)れたけどな。」
「大事(だいじ)な情報(じょうほう)?」
「ファルコンにとって一番(いちばん)大切(たいせつ)な情報(じょうほう)が何(なに)かわかったんだ。
もしファルコンがロシアで獲物(えもの)を捕(つか)まえたときは、
罰(ばつ)が下(くだ)る。」
「・・・わかっています。」
この研究所(けんきゅうじょ)は、オウムが飼(か)われたあの事務所(じむしょ)とつながっています。
藤丸(ふじまる)の部屋(へや)
「うちから支給(しきゅう)されたマシンは?」と小百合(さゆり)。
「あー・・・壊(こわ)れちゃいました。
あ、でも、大丈夫(だいじょうぶ)です。
かなりの所(ところ)まで進(すす)んでいましたし、必要(ひつよう)な手順(てじゅん)は、ちゃんとバックアップ
取(と)ってますから。」
「あれ、その辺(へん)のサーバーより高(たか)いんだけど。」
「やっっっとターゲットのコンピューターにたどり着(つ)いたんですけど、
変(へん)なんです。
俺(おれ)の前(まえ)に侵入(しんにゅう)しようとしたヤツがいるみたいで。
こいつ、BLUEBIRD。
監視(かんし)システムに捕獲(ほかく)されそうになって、ギリギリのところで
逃(に)げ出(だ)したようなんです。
だから、防御(ぼうぎょ)システムに、あちこち傷(きず)を作(つく)ったみたいで。
ぽっかり、裏口(うらぐち)が出来(でき)てました。
今(いま)から、ブレイクインします。」
藤丸(ふじまる)は指(ゆび)の骨(ほね)をポキっと鳴(な)らし、キーボードを叩(たた)き始(はじ)める。
「やったぞ、やった!」
「ただのシステムファイルばかりみたい。」
「・・何(なに)でしょう、これ。」
「ダウンロード、できる?」
「多分(たぶん)。でも、監視(かんし)システムが、30秒(びょう)ごとに怪(あや)しい動(うご)きがないか
モニタリングしているみたいなんです。
ダウンロードに許(ゆる)される時間(じかん)は10秒(びょう)。それ以上(いじょう)いたら捕(つか)まりますね。」「・・・」
「行(い)きます。
ダウンロード始(はじ)まりました。」
ファルコンが入(はい)り込(こ)む。
「遅(おそ)いわね、このボロマシン!」と小百合(さゆり)。
「捕獲(ほかく)完了(かんりょう)!
超(ちょう)危(あぶ)なかった・・
・・ダメです。このファイル、暗号(あんごう)化(か)されています。
まず、暗号(あんごう)化(か)の方式(ほうしき)突(つ)き止(と)めないと。」
「ロシア語(ご)だわ。」
「意味(いみ)は?」
「クリスマスの虐殺(ぎゃくさつ)・・」
「・・・」
徹夜(てつや)で解読(かいどく)を進(すす)める藤丸(ふじまる)たち。
「どう?」
「かなり手(て)ごわいです。」
「じゃあ続(つづ)きはあとで。今日(きょう)は学校(がっこう)に行(い)きなさい。
私(わたし)は目立(めだ)たないようにあなたを警護(けいご)する。」
「僕(ぼく)は大丈夫(だいじょうぶ)です。
それより、遥(はるか)をお願(ねが)いします。」
あくびをしながら学校(がっこう)へ向(む)かう藤丸(ふじまる)を見張(みは)る船木(ふなき)。
「父親(ちちおや)が追(お)われてるっていうのに、学校(がっこう)か。」
小百合(さゆり)は遥(はるか)のマスコットに発信(はっしん)機(き)をセット。
「可愛(かわい)い!」遥(はるか)が小百合(さゆり)のネックレスに触(ふ)れる。
「いいでしょう。
これでよしと。
じゃ、遥(はるか)ちゃん、先(さき)に行(い)って。
私(わたし)は刑事(けいじ)に見(み)つからないように、あとから追(お)うから。」
「・・・」
「大丈夫(だいじょうぶ)。
私(わたし)が絶対(ぜったい)に遥(はるか)ちゃんを守(まも)るから!」
小百合(さゆり)の言葉(ことば)に微笑(ほほえ)む遥(はるか)。
不安(ふあん)そうに玄関(げんかん)を出(で)た遥(はるか)は、兄(あに)の姿(すがた)を見(み)つけて嬉(うれ)しそうに駆(か)け寄(よ)る。
「よし、行(い)こう!」
刑事(けいじ)の車(くるま)が二人(ふたり)を尾行(びこう)する。
遥(はるか)に見(み)せた藤丸(ふじまる)の笑(え)みが素敵(すてき)!
生物(せいぶつ)の授業(じゅぎょう)中(ちゅう)居眠(いねむ)りする藤丸(ふじまる)。
「高木(たかぎ)君(くん)。高木(たかぎ)藤丸(ふじまる)君(くん)。」
「・・・」
「よほど私(わたし)の授業(じゅぎょう)が嫌(きら)いなようね。
いい加減(かげん)怒(おこ)るわよ。
終(おわ)ったら来(らい)なさい。」
マヤの研究(けんきゅう)室(しつ)
「はい、これこの間(かん)のお詫(わ)び。」
「え!?いいんですか!?」
「どう?気(き)に入(い)ってもらえた?」
「ありがとうございます!回(まわ)る!!」
新(あたら)しいパソコンに無邪気(むじゃき)に喜(よろこ)ぶ藤丸(ふじまる)。
「じゃあ聞(き)かせて。
藤丸(ふじまる)君(くん)、何(なに)やってるの?」
「・・・」
「夕(ゆう)べ、徹夜(てつや)だったんでしょう?
私(わたし)の授業(じゅぎょう)で寝(ね)ている生徒(せいと)はあなただけよ。
せっかくサービスして、スカート短(みじか)いの履(は)いてきてたのに。」
「・・・」足(あし)に見(み)とれる藤丸(ふじまる)。
「実(じつ)は・・人(にん)に頼(たの)まれた仕事(しごと)がありまして。」
「うん?それ以上(いじょう)は言(い)えないってわけ?」
「はい。でも本当(ほんとう)に、とても大事(だいじ)な仕事(しごと)なんです。急(いそ)がないと。」
「じゃあここでやれば?
次(つぎ)の授業(じゅぎょう)の先生(せんせい)には、私(わたし)から言(い)っといてあげる。」
「え!?いいんですか!?」
「実(み)を言(い)うとね、なんだか面白(おもしろ)そう!
高木(たかぎ)君(くん)って本当(ほんとう)はすごい人(ひと)だったんだ!」
照(て)れる藤丸(ふじまる)。
「あ、じゃあ、それ、借(か)りていいですか?」
「ね、私(わたし)がプレゼントしたのじゃダメ?」
「あー、無線(むせん)LANは盗聴(とうちょう)される恐(おそ)れがあるんで。」
「ふーん。どうぞ。」
「何(なに)て子(こ)・・
うちのハッカーが消去(しょうきょ)に失敗(しっぱい)したファイルを、
易々(いい)と盗(ぬす)み出(だ)すなんて・・。
もしもこれが暗号(あんごう)化(か)されていなかったら今頃(いまごろ)・・」
「何(なん)だか難(なん)しそう!」
「暗号(あんごう)化(か)キーでデータが変換(へんかん)されているんです。
暗号(あんごう)化(か)キーさえ見(み)つけ出(だ)せれば元(もと)に戻(もど)せるんですけど。」
「どのくらい掛(か)かるの?」
「高性能(こうせいのう)のコンピューターを使(つか)っても、1ヶ月(かげつ)は。」
「そんなに?」
「その頃(ころ)には・・もう全(すべ)ては終(おわ)っている。」
「でも、これはあっという間(ま)に終(おわ)らせる方法(ほうほう)があるんですよ。」
「え?」
「ネットに繋(つな)がっているパソコン同士(どうし)、ファイルを交換(こうかん)したりできる
技術(ぎじゅつ)、まあ、ウィニーみたいなものです。
これを利用(りよう)して、ネットの向(む)こうに、巨大(きょだい)なバーチャルコンピューターを
作(つく)り出(だ)しておいたんです。
ネットの向(む)こうには、何千万(なんせんまん)台(だい)ものコンピューターが繋(つな)がっています。
その全(すべ)てが、いつもフルに自分(じぶん)の能力(のうりょく)を使(つか)ってるわけじゃありません。
そのコンピューターをネット上(じょう)につなげて、
同時(どうじ)に手分(てわ)けをして、総(そう)当(あ)たり攻撃(こうげき)をやらせるんです。
分散(ぶんさん)コンピューティングって感(かん)じですね。」
「・・・」
「来(き)た!暗号(あんごう)化(か)キーだ。これでデータをもとに戻(もど)せる!」
藤丸(ふじまる)の背後(はいご)からナイフを振(ふ)りかざすマヤ。
だが、マヤはナイフを振(ふ)り下(お)ろすことをやめ・・。
廊下(ろうか)、携帯(けいたい)で話(はな)すマヤ。
「ファルコンは飛(と)んでいるか?」
「それが、とうとうデータを見(み)つけ出(だ)してしまいました。
でもご心配(しんぱい)なく。もし本物(ほんもの)だったら、すぐに、」
「その必要(ひつよう)は無(な)い。」
「は?」
「方針(ほうしん)が変(か)わった。
彼(かれ)は殺(ころ)すより生(い)かしておいて利用(りよう)する。
ファルコンは我々(われわれ)の仲間(なかま)になるべき人間(にんげん)だ。」
「解読(かいどく)完了(かんりょう)。」と藤丸(ふじまる)。
「わかりました。」マヤが電話(でんわ)を切(き)る。
ロシアの教会(きょうかい)を撮影(さつえい)した映像(えいぞう)が現(あらわ)れる。
「なんだ。ただのホームビデオか。」
ところが、次々(つぎつぎ)と人(ひと)が倒(たお)れ始(はじ)め・・
「何(なに)だよこれ・・」
「全(すべ)ては2年(ねん)前(まえ)に始(はじ)まっていた。
ファルコン。もうあなたはこの迷宮(めいきゅう)から逃(に)げ出(だ)せない。」
サードアイ
「ファルコンからヤスリウスクのデータです。」
藤丸(ふじまる)が開(ひら)いたファイルの動画(どうが)にみなが言葉(ことば)を失(うしな)う。
「苑(その)麻(あさ)です。
国家(こっか)緊急(きんきゅう)テロ部隊(ぶたい)を召集(しょうしゅう)して下(くだ)さい。」
国家(こっか)緊急(きんきゅう)テロ対策(たいさく)合同(ごうどう)特別(とくべつ)部会(ぶかい)
「何(なに)なんだ、これは・・」と内閣(ないかく)官房(かんぼう)長官(ちょうかん)。
「恐(おそ)らくこれは、天然痘(てんねんとう)とエボラを掛(か)け合(あ)わせて作(つく)られたウィルス。
BLOODY-Xでしょう。」と敷(しき)村(むら)。
「BLOODY-X?
それは確(たし)か、2年(ねん)前(まえ)のテロで!」と大杉(おおすぎ)刑事(けいじ)部長(ぶちょう)。
「公安(こうあん)特殊(とくしゅ)三(さん)課(か)の沖田(おきた)課長(かちょう)がロシアから入手(にゅうしゅ)したデータに入(はい)っていた
塩基(えんき)配列(はいれつ)が、BLOODY-Xのものと、一致(いっち)しました。」と敷(しき)村(むら)。
「先生(せんせい)!もし実際(じっさい)にウィルスがまかれた場合(ばあい)、
被害(ひがい)はどれくらいになりますか?」と池田(いけだ)公安調査庁(こうあんちょうさちょう)部長(ぶちょう)。
「このウィルスは空気(くうき)中(ちゅう)を漂(ただよ)い、人(ひと)から人(ひと)へ簡単(かんたん)に伝染(でんせん)します。
そのあまりにも凄惨(せいさん)な死(し)に方(かた)と、伝染(でんせん)力(りょく)の強(つよ)さから、
旧(きゅう)ソ連(れん)ですら、兵器(へいき)としての開発(かいはつ)を断念(だんねん)したほどです。
ひとたびこれが人(ひと)ごみに撒(ま)かれた場合(ばあい)、
死者(ししゃ)は最初(さいしょ)の1週間(しゅうかん)で、800万(はちぜろぜろまん)人(にん)以上(いじょう)!」
「800万(はちぜろぜろまん)・・」
「あくまでも、予測(よそく)の範囲(はんい)です。」
「抗(こう)ウイルス剤(ざい)は?
2年(ねん)前(まえ)、あなたはその開発(かいはつ)に、着手(ちゃくしゅ)したはずだ。」
「BLOODY-Xは常(つね)に変異(へんい)しています。
それに、抗(こう)ウイルス剤(ざい)の開発(かいはつ)は難(むずか)しく、
膨大(ぼうだい)な資金(しきん)と時間(じかん)が掛(か)かります。
それを知(し)って途中(とちゅう)で開発(かいはつ)を断念(だんねん)するよう決(き)めたのは、
あなた達(たち)じゃないですか!!」
「・・・」
「テロリストは・・今度(こんど)それを日本(にっぽん)で使(つか)おうというのか・・。」
「はい。その可能(かのう)性(せい)は、かなり高(たか)いと思(おも)われます。」
富永(とみなが)医院(いいん)
遥(はるか)を尾行(びこう)していた伊庭(いば)が無線(むせん)で連絡(れんらく)を入(い)れる。
「高木(たかぎ)の娘(むすめ)が透析(とうせき)に入(はい)ったみたいです。」
「一旦(いったん)署(しょ)にもどれ。
透析(とうせき)中(ちゅう)の高木(たかぎ)が接触(せっしょく)することはないだろう。」
「了解(りょうかい)です。」
刑事(けいじ)の車(くるま)が去(さ)るのを見張(みは)る小百合(さゆり)。
ギターケースを抱(かか)えた男(おとこ)が病院(びょういん)に足(あし)を踏(ふ)み入(い)れる。
女性(じょせい)の悲鳴(ひめい)に小百合(さゆり)は病院(びょういん)の様子(ようす)を伺(うかが)う。
「どうしたの?あんなに驚(おどろ)いて。」と女医(じょい)。
「・・・」
「何(なに)かあったの?」
「いや・・別(べつ)に。」と遥(はるか)。
「何(なに)か変(へん)なの。」
病院(びょういん)内(ない)に入(はい)った小百合(さゆり)は、手(て)に蝶(ちょう)のタトゥーをした男(おとこ)を目撃(もくげき)。
男(おとこ)は小百合(さゆり)よりも早(はや)く銃(じゅう)を撃(う)ち、小百合(さゆり)は倒(たお)れてしまう。
銃声(じゅうせい)に気(き)づいた女医(じょい)と遥(はるか)は・・。
学校(がっこう)
藤丸(ふじまる)の携帯(けいたい)がなる。
「遥(はるか)どうした?」
「・・・」
「おーい。」
男(おとこ)が遥(はるか)を抱(かか)え、女医(じょい)を引(ひ)きずりながら病院(びょういん)の廊下(ろうか)を歩(ある)いている。
「フハハハハハ。」
「誰(だれ)だあんた。」
「言(い)うとおりにしたら妹(いもうと)は返(かえ)してやるよ。
関東(かんとう)電力(でんりょく)の、中央(ちゅうおう)制御(せいぎょ)センターのシステムをハッキング。
管理(かんり)者(しゃ)パスワードをゲットしてきて。」
「・・・」
「聞(き)いてんの?急(いそ)いだほうがいいぞ。
ファルコンの妹(いもうと)、早(はや)く透析(とうせき)を受(う)けさせなくちゃならないしね。」
「・・・お前(まえ)ふざけたこと言(い)ってんなよ・・」
「あ、誰(だれ)にも言(い)っちゃダメだよ。
警察(けいさつ)なんて、もってのほかだから。」
電話(でんわ)はそこで切(き)れてしまう。
藤丸(ふじまる)はすぐに小百合(さゆり)に連絡(れんらく)をしてみる。
電話(でんわ)の音(おと)に意識(いしき)を取(と)り戻(もど)す小百合(さゆり)。
「何(なに)やってんだよ!!」怒(おこ)って電話(でんわ)を切(き)る藤丸(ふじまる)。
防弾(ぼうだん)チョッキに食(く)い込(こ)んだ弾丸(だんがん)をはずす小百合(さゆり)。
「宝生(ほうせい)です。
高木(たかぎ)遥(はるか)が誘拐(ゆうかい)されました。
私(わたし)のミスです。」
「お前(まえ)は一体(いったい)何(なに)をやってるんだ!バカヤロウ!
すぐに高木(たかぎ)藤丸(ふじまる)のところへ行(い)け!
犯人(はんにん)がコンタクト取(と)っているはずだ。」と加納(かのう)。
「わかりました。」
「俺(おれ)が余計(よけい)なことをしたからだ・・
父(とう)さんの言(い)うことを聞(き)かなかったから遥(はるか)が・・」
窓(まど)から藤丸(ふじまる)を見(み)つめて微笑(ほほえ)むマヤ。
「どうした、藤丸(ふじまる)。授業(じゅぎょう)始(はじ)まってるぞ。」と九(きゅう)条(じょう)。
「・・ああ。あとから行(い)くわ。」
「おい!藤丸(ふじまる)!
・・・」
意味(いみ)深(ふかし)な表情(ひょうじょう)です。
学校(がっこう)を抜(ぬ)け出(だ)した藤丸(ふじまる)の前(まえ)に、小百合(さゆり)の運転(うんてん)する車(くるま)が止(と)まる。
「乗(の)って!」
「お前(まえ)何(なに)やってんだ!俺(おれ)らを守(まも)るって約束(やくそく)しただろ!
ふざけんなよ!」
「守(まも)りきれなかったことは謝(あやま)ります。
でも今(いま)は遥(はるか)ちゃんの救出(きゅうしゅつ)が先(さき)。
発信(はっしん)機(き)つけておいたの。GPSで居場所(いばしょ)がわかるわ。
行(い)きましょう!」
道端(みちばた)に捨(す)てられた遥(はるか)のカバンを発見(はっけん)する二人(ふたり)。
「宝生(ほうせい)です。敵(てき)は発信(はっしん)機(き)に気(き)づいたようです。
現在(げんざい)表参道(おもてさんどう)。追跡(ついせき)します!」
「いいか。必(かなら)ずテロリストと関係(かんけい)あるやつらだ。
最悪(さいあく)の場合(ばあい)人質(ひとじち)の命(いのち)より犯人(はんにん)確保(かくほ)を優先(ゆうせん)しろ。」と加納(かのう)。
「わかっています。」
加納(かのう)は引(ひ)き出(だ)しに入(い)れた高木(たかぎ)一家(いっか)の写真(しゃしん)を見(み)つめ・・・。
小百合(さゆり)から離(はな)れ、遥(はるか)の行方(ゆくえ)を捜(さが)す藤丸(ふじまる)。
その時(とき)、携帯(けいたい)の音(おと)が聞(き)こえてくる。
振(ふ)り返(かえ)ると、男(おとこ)が携帯(けいたい)を差(さ)し出(だ)していた。
男(おとこ)から携帯(けいたい)を受(う)け取(と)る藤丸(ふじまる)。
「警察(けいさつ)に喋(しゃべ)っちゃったでしょう。」
「・・・いや。」
「うそつき。一緒(いっしょ)に来(き)た女(おんな)、警察(けいさつ)じゃないの?」
あたりを見渡(みわた)す藤丸(ふじまる)。
「妹(いもうと)がどうなってもいいのね。」
「・・・」
「聞(き)いてんの?」
「ハッキングは今(いま)からやるから、遥(はるか)には何(なに)もしないでくれ!」
「10分間(ふんかん)だけ待(ま)つよ。」
電話(でんわ)が切(き)れると、男(おとこ)は携帯(けいたい)を奪(うば)い取(と)りその場(ば)を去(さ)る。
いそいでハッキングを始(はじ)める藤丸(ふじまる)。
「あと5分(ふん)・・お願(ねが)いだ開(ひら)いてくれ・・。」
東京電力(とうきょうでんりょく)・中央(ちゅうおう)制御(せいぎょ)センター
「何(なん)だこれ。」
「武田(たけだ)君(くん)、ちょっと。」
「はい。」
担当(たんとう)者(しゃ)が席(せき)を外(はず)したその時(とき)、ファルコンが侵入(しんにゅう)。
「管理(かんり)者(しゃ)パスワード捕獲(ほかく)完了(かんりょう)!」
藤丸(ふじまる)の携帯(けいたい)がなる。
「パスワード、ありがとな。
それからさ、ちょっと立(た)ってみなよ、はい起立(きりつ)!
立(た)ったら5歩(ほ)前進(ぜんしん)。1、2、3、4、はいストップ!
振(ふ)り向(む)いてみな。
ハハハハハ。お前(まえ)のよーく知(し)ってる人間(にんげん)が待(ま)ってるぞ。」
藤丸(ふじまる)はマネキンと一緒(いっしょ)に並(なら)ばされた遥(はるか)を発見(はっけん)。
店(みせ)に駆(か)けつけると、日景(ひかげ)が注射(ちゅうしゃ)器(き)を手(て)にしていた。
「日景(ひかげ)!」
「ある人(ひと)がお前(まえ)に復讐(ふくしゅう)する方法(ほうほう)があると教(おし)えてくれてね。
私(わたし)はその人(ひと)の為(ため)に働(はたら)くことに決(き)めたんだ。
俺(おれ)は、ずっと一生懸命(いっしょうけんめい)に生(い)きてきた。
お前(まえ)よりずっとな!!
なぜ・・」
「遥(はるか)無事(ぶじ)なんだろうな!?
答(こた)えろ!!」
日景(ひかげ)につかみかかる藤丸(ふじまる)。
「まあいいよ。
パスワードをありがとう。
お陰(かげ)でこれから何百万(なんひゃくまん)人(にん)も死(し)ぬことになる。」
「何百万(なんひゃくまん)人(にん)・・どういう意味(いみ)だよ!
遥(はるか)!遥(はるか)!遥(はるか)!!」
遥(はるか)に駆(か)け寄(よ)る藤丸(ふじまる)。
「遥(はるか)・・もう大丈夫(だいじょうぶ)だから・・。遥(はるか)・・ごめん・・。」
藤丸(ふじまる)の携帯(けいたい)がなる。小百合(さゆり)からだ。
「勝手(かって)に何(なに)しているの!?今(いま)どこにいるのよ!」
病院(びょういん)で透析(とうせき)を受(う)ける遥(はるか)。
隣(となり)のベットには、女医(じょい)が眠(ねむ)っている。
「ハロピレドールを打(う)たれていたみたいだ。
体(からだ)には特(とく)に異常(いじょう)はない。」
医師(いし)の言葉(ことば)にほっとする藤丸(ふじまる)。
「妻(つま)ももうすぐ目(め)が覚(さ)めると思(おも)うよ。」
「ありがとうございました。」
「いや、こちらこそ、お礼(れい)を言(い)うよ。
妻(つま)を救(すく)ってくれて、ありがとう。」
サードアイ、ロッカールーム
「わぉ。
犯人(はんにん)逃(のが)したら意味(いみ)ないんだよ、小百合(さゆり)ちゃん。」と加納(かのう)。
「すみません。」
「高木(たかぎ)は息子(むすこ)たちとコンタクト取(と)ってたか?」
「ロシアのハッキングの件(けん)で一度(いちど)連絡(れんらく)を取(と)っていたみたいです。」
「それだけ?」
「はい。」
加納(かのう)が出(で)ていく。
病院(びょういん)の待合室(まちあいしつ)でパソコンを広(ひろ)げる藤丸(ふじまる)。
テロリストのアジト
「ようこそここへ、クッククック、私(わたし)の青(あお)い鳥(とり)」
歌(うた)いながらハッキングするテロリスト。
サードアイ
「霧島(きりしま)さん、ファルコンからです。」と美姫(びき)。
「おい!勝手(かって)な真似(まね)ばかりしやがってどういうつもりだ!」
電話(でんわ)を横取(よこど)りする加納(かのう)。
「犯人(はんにん)に、関東(かんとう)電力(でんりょく)の中央(ちゅうおう)制御(せいぎょ)センターの管理(かんり)者(しゃ)パスワードを教(おし)えた。」
「言(い)ってる側(がわ)からこのガキ何(なに)言(い)ってんだよ。」
「俺(おれ)の妹(いもうと)の命(いのち)なんてあんたらにはどうでもいいことなんだろ。
だけど・・俺(おれ)にとっては大事(だいじ)な妹(いもうと)なんだよ!
妹(いもうと)を救(すく)うにはやるしかなかった。
今(いま)、犯人(はんにん)のやつらが、中央(ちゅうおう)制御(せいぎょ)センターから、城南(しろみなみ)変電(へんでん)所(しょ)のシステムに
入(はい)り込(こ)んだ。
プログラムを書(か)き換(か)えようとしている。」
「お前(まえ)自分(じぶん)がやったことがわかってんのか!?
そんなことをしたら東京(とうきょう)中(ちゅう)が大(だい)停電(ていでん)になっちまうじゃねーかよ!」
「停電(ていでん)にはならない。
俺(おれ)はあんた達(たち)みたいな間抜(まぬ)けとは違(ちが)う。」
「何(なに)だと!?」
「システムの周(まわ)りにジェイルを組(く)み込(こ)んでおいた。」
「ジェイル?」
「檻(おり)だ。
ヤツラが侵入(しんにゅう)できるのは、俺(おれ)が構築(こうちく)した折(おり)の中(なか)だけ。
あがくだけで何(なに)も出来(でき)ない。」
「制御(せいぎょ)システム、侵入(しんにゅう)成功(せいこう)。」とbluebird。
「その間(あいだ)に、あんたらが犯人(はんにん)を捕(つか)まえてくれればいい。」と藤丸(ふじまる)。
「・・・」
「ね、わかってるでしょう?」
「城南(しろみなみ)変電(へんでん)所(しょ)が電力(でんりょく)を供給(きょうきゅう)している地域(ちいき)を調(しら)べろ。」
加納(かのう)が美姫(びき)に指示(しじ)を出(だ)す。
「ガキの言(い)うことなんか信用(しんよう)できねーぞ。」
「はい!」
テロリストの研究(けんきゅう)室(しつ)
「さあ、パーティーに出(で)かけよう。」
サードアイ
「城南(しろみなみ)変電(へんでん)所(しょ)が電力(でんりょく)を供給(きょうきゅう)しているのは、江東(こうとう)区(く)一体(いったい)です。」と美姫(びき)。
「でも停電(ていでん)を引(ひ)き起(お)こして、敵(てき)は何(なに)をするつもりですかね。」と工藤(くどう)。
「・・・ウイルスだ。」と霧島(きりしま)。
「・・・」
「澤(さわ)北(きた)!エリア内(ない)にある駅(えき)や病院(びょういん)などの大型(おおがた)施設(しせつ)を洗(あら)い出(だ)してくれ。」
「はい!」
テロリストのアジトでは、5人(にん)程(ほど)のテロリストたちが
それぞれトランクに兵器(へいき)を詰(つ)め込(こ)んでいた。
サードアイ
「ウイルスを撒(ま)くとすれば、人(ひと)が密集(みっしゅう)し、ある程度(ていど)密閉(みっぺい)された空間(くうかん)が
必要(ひつよう)・・。」と小百合(さゆり)。
「この時間(じかん)帯(たい)の江東(こうとう)区(く)の人口(じんこう)の分布(ぶんぷ)は?」と霧島(きりしま)。
「今(いま)やってます。」と美姫(びき)。
「愛想(あいそ)ねーな、澤(さわ)北(きた)。
駅(えき)、地下鉄(ちかてつ)・・」と加納(かのう)。
「確(たし)かにその可能(かのう)性(せい)はありますが、列車(れっしゃ)用(よう)の変電(へんでん)所(しょ)は管轄(かんかつ)地区(ちく)外(がい)です。」
「一応(いちおう)鉄道(てつどう)警察(けいさつ)に警戒(けいかい)を当(あ)たらせろ。」と加納(かのう)。
「はい!」
テロリストたちはスーツケースを運(はこ)び出(だ)し・・
サードアイ
「有明(ありあけ)のイベント会場(かいじょう)もありますが、既(すで)に終了(しゅうりょう)しています。」と美姫(びき)。
「停電(ていでん)が起(お)きて空調(くうちょう)が止(と)まる。
空調(くうちょう)が止(と)まれば、ウイルスは拡散(かくさん)しない絶好(ぜっこう)の環境(かんきょう)。」とかおる。
「あ・・豊洲(とよす)フロンティアが今日(きょう)オープニングイベント行(い)っていますね。」と美姫(びき)。
「・・・そこか!」
豊洲(とよす)フロンティアにサードアイが駆(か)けつける。
「警察庁(けいさつちょう)公安(こうあん)特殊(とくしゅ)三(さん)課(か)です。
実(じつ)はこのモールでウイルステロの危険(きけん)性(せい)があるんですよ。
ちょっと捜査(そうさ)員(いん)入(はい)りますね、よろしくお願(ねが)いします。」
「全(ぜん)捜査(そうさ)官(かん)に告(つ)ぐ。
捜査(そうさ)官(かん)は予定(よてい)された配置(はいち)に付(つ)き、不振(ふしん)人物(じんぶつ)の監視(かんし)、及(およ)び、
ゴミ箱(ばこ)、植物(しょくぶつ)など、ウイルス兵器(へいき)が設置(せっち)されると思(おも)われる設備(せつび)の撤去(てっきょ)を
速(すみ)やかに行(おこな)え。
突入(とつにゅう)部隊(ぶたい)は正面(しょうめん)、第(だい)2ゲートより50メートル圏内(けんない)で待機(たいき)。
指示(しじ)を待(ま)て!
3階(かい)フロアより、順次(じゅんじ)に、
客(きゃく)に気(き)づかれずに外(そと)に出(だ)す。
客(きゃく)のパニックだけは、何(なに)としても避(さ)けなければならない。」
檻(おり)に迷(まよ)い込(こ)むbluebird。
「ファルコン・・小細工(こざいく)しやがって!!」
藤丸(ふじまる)も豊洲(とよす)フロンティアに到着(とうちゃく)。
加納(かのう)が藤丸(ふじまる)に気(き)づき捕(つか)まえる。
「何(なに)しに来(き)たこのガキ!遊(あそ)びじゃねーんだよ!」
「・・・」
「お前(まえ)の仕事(しごと)終(おわ)ったろ!
これから大人(おとな)の時間(じかん)だ。帰(かえ)れ!」
「・・・」
藤丸(ふじまる)は加納(かのう)の腕(うで)を振(ふ)り解(と)き、店(みせ)の奥(おく)へ。
関東(かんとう)電力(でんりょく)・中央(ちゅうおう)防御(ぼうぎょ)センター
サードアイの牧野(まきの)が何者(なにもの)かに襲(おそ)われる。
豊洲(とよす)フロンティア
子供(こども)たちに風船(ふうせん)を配(くば)るピエロが、藤丸(ふじまる)に気(き)づきしばし彼(かれ)を見(み)つめる。
ピエロは藤丸(ふじまる)に歩(あゆ)み寄(よ)り、風船(ふうせん)を渡(わた)そうとする。
差(さ)し出(だ)されたその手(て)には、緑色(みどりいろ)の指輪(ゆびわ)。
藤丸(ふじまる)が風船(ふうせん)を受(う)け取(と)ろうとしたとき、ピエロの手(て)から風船(ふうせん)が離(はな)れ
天井(てんじょう)へと飛(と)んでいってしまう。
「おい!」
その時(とき)、会場(かいじょう)は停電(ていでん)に。
「停電(ていでん)しねーってあのガキ!してんじゃねーかよ!」と加納(かのう)。
「宝生(ほうせい)。整備(せいび)室(しつ)の状況(じょうきょう)はどうなってる。」と霧島(きりしま)。
「こちら以上(いじょう)ありません。
まもなく非常(ひじょう)電源(でんげん)が作動(さどう)すると思(おも)われます。」
「司令(しれい)部(ぶ)より中央(ちゅうおう)制御(せいぎょ)センター、牧野(まきの)。」と霧島(きりしま)。
「・・・」
「司令(しれい)部(ぶ)より牧野(ぼくや)。」
「・・・」
「どうした?」と局長(きょくちょう)。
「応答(おうとう)ありません。
工藤(くどう)、牧野(まきの)の応答(おうとう)がない。
至急(しきゅう)システム室(しつ)へ確認(かくにん)に向(む)かってくれ。」
「了解(りょうかい)!」
工藤(くどう)たちがシステム室(しつ)に行(い)くと、護衛(ごえい)についていた仲間(なかま)たちも、
電力(でんりょく)会社(かいしゃ)の社員(しゃいん)たちもみな気(き)を失(うしな)っていた。
「やられました!城南(しろみなみ)変電(へんでん)所(しょ)何者(なにもの)かにやられました!」
「工藤(くどう)、無茶(むちゃ)するな。」
「わかってます!」
豊洲(とよす)フロンティア
非常(ひじょう)電源(でんげん)が作動(さどう)し、人々(ひとびと)がほっとする。
藤丸(ふじまる)はその場(ば)から逃走(とうそう)するピエロに気(き)づく。
ピエロが置(お)いていった風船(ふうせん)が繋(つな)がれた箱(はこ)に、子供(こども)達(たち)が群(むら)がっている。
箱(はこ)から光(ひかり)が点滅(てんめつ)していることに気(き)づいた藤丸(ふじまる)は、あわてて箱(はこ)に駆(か)け寄(よ)る。
「触(さわ)っちゃダメだ!」
風船(ふうせん)が箱(はこ)のふたをゆっくりと上昇(じょうしょう)させていく。
箱(はこ)にはウイルス兵器(へいき)がくくりつけられており・・。
「離(はな)れろ!!」藤丸(ふじまる)が叫(さけ)ぶ。
タイマーがゼロになり、スプレーから白(しろ)い粉(こな)が散布(さんぷ)される。
何(なに)が起(お)きたのかわからない人々(ひとびと)は、ただ呆然(ぼうぜん)とそれを見(み)つめ・・。
「どうした・・」と霧島(きりしま)。
「やられちった・・」と加納(かのう)。
「小型(こがた)のスプレーから粉末(ふんまつ)が散布(さんぷ)されました。
ウイルスかもしれません。」とかおる。
「ウイルス・・」と藤丸(ふじまる)。
「ただちに・・全館(ぜんかん)封鎖(ふうさ)だ。」と局長(きょくちょう)。
「・・・全(ぜん)捜査(そうさ)官(かん)に告(つ)ぐ。
プランA発令(はつれい)。メインゲート、第(だい)2ゲート封鎖(ふうさ)。
メインコート及(およ)び、ショッピングコートの客(きゃく)を誘導(ゆうどう)。
モール内(ない)、A、B、C、Dブロックの防火(ぼうか)シャッターを下(お)ろす。
東京(とうきょう)消防庁(しょうぼうちょう)ハイパーレスキュー到着(とうちゃく)後(ご)、自分(じぶん)、霧島(きりしま)が誘導(ゆうどう)する。
ウイルスが本物(ほんもの)かどうか判明(はんめい)するまでは、客(きゃく)を一歩(いっぽ)も表(ひょう)に出(だ)しては
ならない。」
人々(ひとびと)は事態(じたい)がわからぬままパニック状態(じょうたい)に陥(おちい)る。
関東(かんとう)電力(でんりょく)・城南(しろみなみ)変電(へんでん)所(しょ)
工藤(くどう)に襲(おそ)い掛(か)かる出(いずる)門(もん)。
豊洲(とよす)フロンティアに消防(しょうぼう)隊(たい)が到着(とうちゃく)する。
「消防(しょうぼう)隊(たい)はこれから内部(ないぶ)に進入(しんにゅう)して、物質(ぶっしつ)を特定(とくてい)します。」
「お願(ねが)いします。」と霧島(きりしま)。
霧島(きりしま)も防護(ぼうご)服(ふく)を着用(ちゃくよう)し、消防(しょうぼう)隊(たい)と共(とも)に会場(かいじょう)に入(はい)っていく。
城南(しろみなみ)変電(へんでん)所(しょ)
出(で)門(もん)に銃(じゅう)を突(つ)きつけられた工藤(くどう)。
「ブラッディ・マンデイ。」
出(で)門(もん)はそう言(い)い、その場(ば)を去(さ)る。
夜道(よみち)を1人(にん)歩(ある)くマヤ。
「ブラッディ・マンデイ。」と呟(つぶや)き微笑(ほほえ)み・・。
独房(どくぼう)に食事(しょくじ)を届(とど)ける警察官(けいさつかん)。
「今(いま)夜(よる)はパーティーか。」神島(かみじま)が呟(つぶや)く。
豊洲(とよす)フロンティア
1人(にん)の男(おとこ)が鼻血(はなぢ)を出(だ)し、そして吐血(とけつ)する。
「・・・おい、みんな・・逃(に)げろ!!」
別(べつ)の場所(ばしょ)では、二人(ふたり)の女性(じょせい)が吐血(とけつ)。
会場(かいじょう)はますますパニック状態(じょうたい)に。
「加納(かのう)さん!」霧島(きりしま)が声(こえ)をかける。
加納(かのう)は人(ひと)が吐(は)いた血(ち)を見(み)つめていた。
「・・・30分(ふん)以内(いない)に洗浄(せんじょう)を。
抗(こう)ウイルス剤(ざい)を打(う)てば、まだ間(ま)に合(あ)うかもしれません!」
「あれだけの人数(にんずう)、この騒(さわ)ぎじゃ無理(むり)だ。
霧島(きりしま)!ウイルスの分析(ぶんせき)を急(いそ)げ!」
「加納(かのう)さん!」
「俺(おれ)たちはいいから早(はや)く行(い)け!」
「・・・」
「行(い)けよ!」
「・・・」
「本物(ほんもの)だよ・・。」
出口(でぐち)に殺到(さっとう)する人々(ひとびと)。
「開(あ)けろ!」
「何(なに)見(み)てるんだよ!出(だ)してくれよ!
なぜ何(なに)もしないんだよ!
開(あ)けてくれ!お前(ぜん)見殺(みごろ)しか!?」
「最悪(さいあく)の事態(じたい)になったね。
プランBだ。」
「・・・わかりました。」と局長(きょくちょう)。
「さあ、お手並(てな)み拝見(はいけん)。」
パニックに陥(おちい)る人々(ひとびと)を呆然(ぼうぜん)と見詰(みつ)める藤丸(ふじまる)。
会場(かいじょう)の周(まわ)りをSATが取(と)り囲(かこ)む。
「全(ぜん)捜査(そうさ)官(かん)。
国家(こっか)監理(かんり)からの通達(つうたつ)を伝(つた)える。
モール内(ない)は、ウイルス感染(かんせん)の可能(かのう)性(せい)、強(つとむ)と判断(はんだん)。
どんなことがあっても、外(そと)に出(だ)してはいけない。
万(まん)が一(いち)、万(まん)が一(いち)・・外(そと)に出(で)たものは・・・
射殺(しゃさつ)も辞(じ)さない。」
「ちょっと待(ま)ってください、局長(きょくちょう)!」と霧島(きりしま)。
「命令(めいれい)だ霧(きり)島(しま)!
ウイルスがBLOODY-Xだったら、800万(はちぜろぜろまん)人(にん)の命(いのち)が奪(うば)われることになる!」
「しかし・・」
「私(わたし)だってそんなことはしたくない!
だが東京(とうきょう)が消(き)えるんだぞ。
ロシアの・・ヤスリークスのように。」
「我々(われわれ)は、そうはさせません。
最後(さいご)まで諦(あきら)めません!
中(ちゅう)にいるみんなだって、一緒(いっしょ)に戦(たたか)ってるんだ!!」
ドアから出(で)ようと殺到(さっとう)する人々(ひとびと)。
「出(で)るな!」とかおる。
「出(で)ないで下(くだ)さい!
出(で)ようとする人(ひと)は、撃(う)ちます!」と小百合(さゆり)。
サードアイが必死(ひっし)にドアを守(まも)る。
「霧島(きりしま)・・命令(めいれい)は、絶対(ぜったい)だ。」と局長(きょくちょう)。
悔(くや)しさを隠(かく)せない霧島(きりしま)。
その横(よこ)で、消防庁(しょうぼうちょう)がウイルスの特定(とくてい)を急(いそ)いでいた。
パニックとなった人々(ひとびと)を見(み)つめながらその場(ば)に座(すわ)り込(こ)む藤丸(ふじまる)。
「パスワードをありがとう。
お陰(かげ)でこれから何百万(なんひゃくまん)人(にん)も死(し)ぬことになる。」
テロリストの言葉(ことば)を思(おも)い出(だ)していた。
加納(かのう)が藤丸(ふじまる)の肩(かた)を叩(たた)く。
「・・・俺(おれ)のせいです。
俺(おれ)のせいでこの人(ひと)たち・・」
「お前(まえ)のせいじゃねーよ。
やつら直接(ちょくせつ)変電(へんでん)所(しょ)を襲(おそ)って停電(ていでん)引(ひ)き起(お)こしたんだ。
お前(まえ)は何(なに)をしようと関係(かんけい)なかったってことさ。」
「・・・みんな死(し)ぬんですか?」
「お前(まえ)も俺(おれ)もあと数(すう)時間(じかん)の命(いのち)だ。」
「外(そと)の人(ひと)何(なに)やってるんですか!何(なに)で助(たす)けに来(き)てくれないんですか!」
「ここから出(で)たやつは射殺(しゃさつ)される。
1人(にん)でも外(そと)に出(で)たらそいつが感染(かんせん)源(げん)となって、
何百万(なんひゃくまん)人(にん)も死(し)ぬことになるんだからな。
・・・何(なに)かを守(まも)るっていうのはこういうことだ。」
「・・・」
しゃがみ込(こ)むお年寄(としよ)り、泣(な)き叫(さけ)ぶ子供(こども)を見(み)つめながら
藤丸(ふじまる)は悔(くや)しそうに涙(なみだ)をこぼす。
宣伝(せんでん)でも見(み)た、この泣(な)き方(かた)に惚(ほ)れました。
「俺(おれ)・・・俺(おれ)・・風船(ふうせん)を置(お)いていったヤツ見(み)たんです。」
「何(なん)?」
「停電(ていでん)する直前(ちょくぜん)でした。
ピエロの格好(かっこう)して、風船(ふうせん)を置(お)いていったんです。」
「バカだな何(なん)で早(はや)く言(い)わないんだよ。
風船(ふうせん)置(お)いていったやつどこ行(い)ったんだよ。」
「・・・」
「思(おも)い出(だ)せよ!
いいから思(おも)い出(だ)せよ!」
「ここのシステムに侵入(しんにゅう)すれば、防犯(ぼうはん)カメラの映像(えいぞう)が手(て)に入(はい)るはずです!」
カバンからパソコンを取(と)り出(だ)しハッキングする藤丸(ふじまる)。
「全(ぜん)捜査(そうさ)官(かん)に告(つ)ぐ。
犯人(はんにん)らしき男(おとこ)はまだこの館内(かんない)にいる。
ピエロの格好(かっこう)をしている。探(さが)すぞ!
死(し)ぬ前(まえ)の最後(さいご)の奉公(ほうこう)だ。」
入(い)り口(くち)に集(あつ)まった人々(ひとびと)は、何(なん)とかドアを開(あ)けようとする。
「おい、何(なん)とかしろよ、助(たす)けてくれよ!
全員(ぜんいん)で開(あ)けるしかねーぞ!」
「おー!」
藤丸(ふじまる)はピエロを探(さが)しに食堂(しょくどう)へ。
そこに、咳(せ)き込(こ)みながら倒(たお)れている人(ひと)がいた。
「助(たす)けて・・」
助(たす)けを求(もと)める男(おとこ)の姿(すがた)に、ロシアの映像(えいぞう)での感染(かんせん)者(しゃ)の姿(すがた)が重(かさ)なる。
「大丈夫(だいじょうぶ)ですか?」
男(おとこ)に手(て)を差(さ)し伸(の)べる藤丸(ふじまる)。
その男(おとこ)の指(ゆび)には、ピエロがしていた緑色(みどりいろ)の指輪(ゆびわ)があった。
男(おとこ)がいきなり藤丸(ふじまる)に襲(おそ)い掛(か)かる。
「お前(まえ)・・偽者(にせもの)・・」
男(おとこ)は藤丸(ふじまる)を殴(なぐ)りつけて逃走(とうそう)。
ドアを突破(とっぱ)しようとする人々(ひとびと)を警察(けいさつ)の銃(じゅう)が狙(ねら)う。
人々(ひとびと)の元(もと)へと急(いそ)ぐ藤丸(ふじまる)。
「どけ!どけ!!
ウイルスは偽物(にせもの)だー!!
偽物(にせもの)なんだよー!!
やめろーー!」
「お前(まえ)ら見(み)てんじゃねー!」
先頭(せんとう)の男(おとこ)がドアから顔(かお)を出(だ)す。
警察(けいさつ)が引(ひ)き金(がね)を引(ひ)こうとしたその時(とき)、
「ネガティブ!」「ネガティブ!」「ネガティブ!」
消防(しょうぼう)員(いん)のその言葉(ことば)に、霧島(きりしま)が走(はし)る。
人々(ひとびと)を押(お)しのけ、藤丸(ふじまる)がドアから外(そと)へと飛(と)び出(だ)していく。
「局長(きょくちょう)!ウイルスは偽物(にせもの)です!」と霧島(きりしま)。
藤丸(ふじまる)を取(と)り押(お)さえようとする加納(かのう)。
藤丸(ふじまる)を狙(ねら)うライフル。
「中止(ちゅうし)!発砲(はっぽう)中止(ちゅうし)!!」と局長(きょくちょう)。
だが命令(めいれい)を間(ま)に合(あ)わず、ライフルから一発(いっぱつ)発砲(はっぽう)され、
藤丸(ふじまる)の背後(はいご)のガラスが粉々(こなごな)に割(わ)れ落(お)ちる。
開放(かいほう)されたドアから逃(に)げ出(だ)す人々(ひとびと)。
局長(きょくちょう)の下(した)に集(あつ)まるサードアイ。
電話(でんわ)でテロリストと話(はな)すマヤ。
「お見事(みごと)。」
「我々(われわれ)の力(ちから)はこんなものじゃない。
もうすぐ選(えら)ばれし者(しゃ)に、本当(ほんとう)の罰(ばつ)が下(くだ)る。
そして・・ファルコンはもう我々(われわれ)の手(て)の内(うち)にある。」
マヤの前(まえ)に高木(たかぎ)が立(た)っていた。
マヤは微笑(びしょう)を浮(う)かべ・・。
独房(どくぼう)に食事(しょくじ)を運(はこ)ぶ職員(しょくいん)。
「殺(ころ)したい人間(にんげん)はいるか?」
男(おとこ)の声(こえ)に足(あし)を止(や)め・・。
『モールで爆弾(ばくだん)だか毒(どく)ガスだかの騒(さわ)ぎが』
『警察(けいさつ)も間抜(まぬ)けだよね』
『でも誰(だれ)も死(し)ななくて、ちょっと残念(ざんねん)。』
歯(は)を磨(みが)きながらメールを打(う)つ女性(じょせい)・安田(やすだ)由紀子(ゆきこ)(江口(えぐち)のりこ)。
宅配(たくはい)業者(ぎょうしゃ)が荷物(にもつ)を届(とど)ける。
独房(どくぼう)
「いるなら言(い)いなさい。
ここから殺(ころ)してあげよう。」と神島(かみじま)。
「・・・」
「何(なに)やってるんだお前(まえ)は!!
行(い)くぞ!!」
別(べつ)の職員(しょくいん)があわてて新米(しんまい)職員(しょくいん)を連(つ)れていく。
宅配(たくはい)で届(とど)いた荷物(にもつ)を開(あ)ける安田(やすだ)由紀子(ゆきこ)。
それこそがウイルス兵器(へいき)で、彼女(かのじょ)は煙(けむり)を浴(あ)びてしまい・・。
帰(かえ)り道(みち)、電話(でんわ)をしながら歩(ある)く藤丸(ふじまる)。
「あ、高木(たかぎ)です。
遥(はるか)大丈夫(だいじょうぶ)ですか?」
「心配(しんぱい)ない。透析(とうせき)ももうすぐ終(おわ)るよ。」
「じゃあ、俺(おれ)今(いま)から迎(むか)えに行(い)きます。
遥(はるか)に待(ま)っているよう伝(つた)えておいてください。」
「わかった。」
医師(いし)が女医(じょい)の頬(ほお)を撫(な)でる。
女医(じょい)が目(め)を覚(さ)ます。
「・・・あなた、誰(だれ)?」
「・・・」
病院(びょういん)へと走(はし)る藤丸(ふじまる)をある男(おとこ)が見張(みは)っていて・・。
公式(こうしき)HPより
2時間(じかん)スペシャル、面白(おもしろ)かったです!
初回(しょかい)からいきなり主人公(しゅじんこう)が感染(かんせん)!?と思(おも)ったら、偽装(ぎそう)テロでした。
吐血(とけつ)した3人(にん)の人々(ひとびと)は、テロリストの仲間(なかま)、ということですよね。
ドアを蹴破(けやぶ)ろうと煽(あお)っていた人(ひと)も、テロリストの仲間(なかま)なのかな。
今回(こんかい)の偽装(ぎそう)テロは、テロリストたちにとってどんなメリットが
あるのでしょう。
警察(けいさつ)の無能(むのう)さをあざ笑(わら)うためなのか、
これから起(お)こす本物(ほんもの)のテロ行為(こうい)を盛(も)り上(あ)げるためなのか。
このテロリストグループ、はっきり姿(すがた)が映(うつ)し出(だ)されていないのですが、
どうやら普通(ふつう)の男女(だんじょ)、という感(かん)じです。
冒頭(ぼうとう)のネットの書(か)き込(こ)み、
JACKとYUKIは同(おな)じ人物(じんぶつ)なのか、仲間(なかま)なのか?それとも偶然(ぐうぜん)なのか?
ちょっと気(き)になりました。
サードアイにいるスパイは誰(だれ)なのでしょう。
美姫(びき)や沖田(おきた)を見(み)ていた加納(かのう)が怪(あや)しいですが、ミスリードかな。
美姫(びき)を見(み)ていて『アンフェア』の蓮見(はすみ)杏奈(あんな)を思(おも)い出(だ)しました。
彼女(かのじょ)がスパイという可能(かのう)性(せい)だってありそうです。
高木(たかぎ)一家(いっか)の家族(かぞく)写真(しゃしん)を見(み)つめる加納(かのう)。
ここにも何(なに)か理由(りゆう)が隠(かく)されていそう。
高木(たかぎ)の妻(つま)の死(し)はウイルスと関係(かんけい)しているのか!?
ハッキングする様子(ようす)を、施設(しせつ)に入(はい)り込(こ)むファルコンで描(えが)いているのも
面白(おもしろ)いです。
もう1人(にん)のハッカー、bluebirdはテロリストの中(なか)の誰(だれ)かですね。
アジトで飼(か)われるオウムの色(いろ)から取(と)った名前(なまえ)のようです。。
脇(わき)を固(かた)める俳優(はいゆう)さんも好(す)きな人(ひと)ばかり。
ドラマ『SP』でファンになった野間口(のまぐち)徹(とおる)さん。
嶋田(しまだ)久作(きゅうさく)さんは人(ひと)の心(こころ)をコントロールできるのか?
最初(さいしょ)のターゲットにされてしまった女性(じょせい)役(やく)の江口(えぐち)のりこさん。
『時効(じこう)警察(けいさつ)』での独特(どくとく)な雰囲気(ふんいき)が大好(だいす)きでした。
そして、吉瀬(よしせ)美智子(みちこ)さんの雰囲気(ふんいき)が『ライアーゲーム』のエリー以上(いじょう)に
妖(あや)しく美(うつく)しくて。
マヤと高木(たかぎ)の関係(かんけい)は!?
今後(こんご)、いろいろと話(はなし)が広(ひろ)げられていきそうで、面白(おもしろ)くなりそうです