어린왕자이야기

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나의 공부/Drama★Story

ヴォイス 03

grandguy 2009. 4. 27. 09:49

『15(ねん)(まえ)(はは)死因(しいん)は』

(あずま)(りん)大学(だいがく)医学部(いがくぶ)のゼミ(せい)加地(かじ)(だい)()(あきら)(ふとし))、石末(いしずえ)亮介(りょうすけ)生田(いくた)()(しん))、久保(くぼ)(あき)佳奈子(かなこ)石原(いしはら)さとみ)は、タクシーの(なか)突然(とつぜん)()したという女性(じょせい)遺体(いたい)対面(たいめん)する。

解剖(かいぼう)(だい)(よこ)たわる女性(じょせい)()教授(きょうじゅ)佐川(さがわ)文彦(ふみひこ)時任(ときとう)三郎(さぶろう))は、死因(しいん)がクラッシュシンドロームではないかとの見解(けんかい)(しめ)す。(じょ)(きょう)夏井(なつい)(がわ)玲子(れいこ)矢田(やだ)亜希子(あきこ))は、クラッシュシンドロームは別名(べつめい)()(めつ)症候群(しょうこうぐん)といい、事故(じこ)などで身体(しんたい)長時間(ちょうじかん)圧迫(あっぱく)された(のち)(きゅう)開放(かいほう)されることで()こる症候(しょうこう)だと説明(せつめい)

そんな(なか)佐川(さがわ)はその証拠(しょうこ)ともいえるアザを女性(じょせい)(あし)(みと)める。すると、それを()佳奈子(かなこ)(なみだ)(なが)す。

その()佳奈子(かなこ)(だい)()亮介(りょうすけ)に、女性(じょせい)のアザが母親(ははおや)()くなったときのアザに酷似(こくじ)していたと(はな)す。15(ねん)(まえ)心臓(しんぞう)発作(ほっさ)()くなったはずの母親(ははおや)にアザがあるのを不審(ふしん)(おも)った佳奈子(かなこ)は、大人(おとな)(うった)えるが相手(あいて)にされなかった。以来(いらい)(いま)でもそれが()になっているという佳奈子(かなこ)に、(だい)()(いま)からでも調(しら)べられるのでは、と(こと)もなげに()う。

そして、(だい)()ら3(にん)は、かつて佳奈子(かなこ)母親(ははおや)雪子(ゆきこ)(つと)めていた工場(こうじょう)へとやってくる――。

公式(こうしき)HPより
クラッシュシンドローム。()(めつ)症候群(しょうこうぐん)
(わたし)もこの言葉(ことば)阪神(はんしん)淡路(あわじ)大震災(だいしんさい)()りました。
長時間(ちょうじかん)圧迫(あっぱく)された(のち)(きゅう)開放(かいほう)されると、カリウム(とう)過剰(かじょう)放出(ほうしゅつ)
心不全(しんふぜん)()()こすことがある。

女性(じょせい)のアザを()佳奈子(かなこ)は、母親(ははおや)遺体(いたい)出来(でき)ていたアザを(おも)()す。

佳奈子(かなこ)(はなし)()(だい)()亮介(りょうすけ)
「お(かあ)さんね、工場(こうじょう)仕事(しごと)していたんだけど、
 タイムカードは、(かえ)直前(ちょくぜん)()すのが習慣(しゅうかん)だった。
 でもあの()、タイムカード()した(のち)なのに、デスクに(すわ)ったまま、
 (いき)()()ってた。
 おかしいなぁってずっと(おも)ってた。
 (まえ)()にはなかったのに、(なに)(あし)にアザがあるんだろう。
 仕事(しごと)()わったのに、(なに)でデスクに(もど)ったんだろうって。」
「それって(いま)からでも調(しら)べられるんじゃないの?」と(だい)()
「うん?」
「だっておかしいと(おも)ってるんでしょう?」
「でも、15(ねん)(まえ)のことだし。」
「やれるだけのこと、やってみればいいじゃん。」
「そうだよ、やってみろ!」と亮介(りょうすけ)
「お(まえ)手伝(てつだ)うんだよ。
 おばさん((おおとり)())に()われただろ?
 (おとこ)なら、責任(せきにん)()って、()()げろって。」

こうして(さん)(にん)は、佳奈子(かなこ)故郷(こきょう)へ。

(ゆき)さんのいた(ころ)工場(こうじょう)は、本当(ほんとう)(あか)るかった。
 仕事(しごと)には(きび)しかったけどね、いつも、みんなに(こえ)()けてくれてな。」「あの()(はは)がどうしてたのか()りたいんです。
 この工場(こうじょう)で、(なに)があったのか。」
「ずいぶん、(むかし)(はなし)だからね・・。」

当時(とうじ)雪子(ゆきこ)()いた伝票(でんぴょう)調(しら)べていた(だい)()は、(はこ)(なか)から雪子(ゆきこ)軍手(ぐんて)
()つける。
退出(たいしゅつ)記録(きろく)は18()3(ふん)

(さん)(にん)は、当時(とうじ)一緒(いっしょ)(はたら)いていた八木(はちぼく)(たず)ねていく。
(かれ)工場(こうじょう)()めて(いま)駄菓子(だがし)()たかしを(いとな)んでいた。
(ゆき)さんか・・。
 仕事(しごと)担当(たんとう)全然(ぜんぜん)(ちが)ったから、(ちょう)(かえ)りに挨拶(あいさつ)するぐらいしか
 接点(せってん)なかったんだよね。」
八木(やぎ)さんは、どんな仕事(しごと)をされていたんですか?」
完成(かんせい)したパイプイスを、検品(けんぴん)して納品(のうひん)する作業(さぎょう)だ。
 それで(こし)やっちゃって、10(ねん)(まえ)から親父(おやじ)(あと)()いでこの(みせ)やってんだ。
 (じん)さんの(ほう)(ゆき)さんのこと色々(いろいろ)()ってるんじゃないのかな。
 ()(にん)仲良(なかよ)かったし。」
「あの!このあんこ(だま)()(くだ)さい。」と(だい)()
「50(えん)。」
「はい。」

(つづ)いて(さん)(にん)高田(たかだ)という人物(じんぶつ)(たず)ねて小学校(しょうがっこう)へ。
だが(かれ)(すで)小学校(しょうがっこう)()めてしまっていた。夜逃(よに)げしてしまったらしい。

写真(しゃしん)()られた掲示板(けいじばん)(まえ)(あし)()める(さん)(にん)
亮介(りょうすけ)はカメラによく()ってもらえるポジションを(ねら)っていたと(はな)すと、
(わたし)(しん)(ぎゃく)だね。
 学校(がっこう)行事(ぎょうじ)とか(きら)いだった。
 お(かあ)さん、日曜日(にちようび)(べつ)仕事(しごと)しててさ。
 授業(じゅぎょう)参観(さんかん)とか運動会(うんどうかい)とか、みんな()られなくて。
 お(かあ)さんにとったらそれどころじゃなかったんだろうけど、
 でもやっぱり・・()のお(かあ)さんが()ているのを()ていると、
 (うらや)ましいなって・・。」
佳奈子(かなこ)はそう(さび)しそうに(はな)す。

派出所(はしゅつじょ)(はなし)()(さん)(にん)
警官(けいかん)は、遺族(いぞく)なら検視(けんし)調書(ちょうしょ)()られるのでは、とアドバイス。

警察(けいさつ)(しょ)調書(ちょうしょ)()せてもらう佳奈子(かなこ)
そこで佳奈子(かなこ)(はは)遺体(いたい)写真(しゃしん)()つめ・・。

(だい)()一人(ひとり)工場(こうじょう)(もど)り、(じん)(はなし)()いてみる。
(ゆき)さんってどんな作業(さぎょう)やっていたんですか?」
「パイプイスのパイプの部分(ぶぶん)、あれ。
 仕事(しごと)はプロ(ちゅう)のプロだったよ。
 (おとこ)なんか()じゃないってくらいにね。
 ちんたらやってるヤツには(きび)しかったからね。
 (わか)いやつで、(ゆき)さんのことを、鬱陶(うっとう)しく(おも)っているやつは、
 いたかもしれないな。
 もう、うちじゃ、パイプイスを(つく)っていないからね。
 この機械(きかい)も、使(つか)っていないんだ。」
当時(とうじ)得意(とくい)(さき)リストみたいのはありますか?」
「ああ、ちょっと()ってて。」
(じん)(せき)(はず)した(とき)(だい)()毛糸(けいと)につながれたエンピツを()つける。
両端(りょうたん)(けず)ってある。(たし)佳奈子(かなこ)(いえ)でそう使(つか)っていたと()っていた・・。
「そういえば、昼飯(ひるめし)はいつもここで(いち)(にん)弁当(べんとう)()べてたな。」
意外(いがい)ですね。(あか)るい(ひと)だって()いていたから。」
「だろ?それで(おれ)一度(いちど)()いてみたことがあるんだ。
 どうしてみんなと一緒(いっしょ)()べないんだって。
 そしたら、(なに)ていったと(おも)う?
 手抜(てぬ)弁当(べんとう)()られるの、()ずかしいからだってさ。」
「・・・」

佳奈子(かなこ)写真(しゃしん)警察(けいさつ)()りて佐川(さがわ)教授(きょうじゅ)()せていた。
遺体(いたい)(のこ)っていないからね、フラッシュシンドロームの可能(かのう)(せい)
 (じゅう)(ふん)にあるけれど断定(だんてい)出来(でき)ないなl
 ()(ちゅう)尿(にょう)(ちゅう)のミオグロビンの(りょう)測定(そくてい)できて(はじ)めて
 クラッシュシンドロームだと推測(すいそく)できるわけだから。」
「・・・今更(いまさら)、いくら頑張(がんば)っても死因(しいん)はわからないってことなんですね。」
事故(じこ)()ったとかそういう証言(しょうげん)()てこない(かぎ)りは(むずか)しいだろうな。」
「・・そうですか。わかりました。ありがとうございました。」
「クラッシュシンドロームっていうのはさ、死因(しいん)(なか)唯一(ゆいいつ)
 (ひと)(やさ)しさが()()こす、()なんだ。」
(やさ)しさですか?」
阪神(はんしん)淡路(あわじ)大震災(だいしんさい)(とき)にレスキュー(たい)()()りない地域(ちいき)では、
 近所(きんじょ)(ひと)たちが総出(そうで)で、倒壊(とうかい)した(いえ)(なか)(うず)もれた(ひと)たちを救助(きゅうじょ)した。
 見捨(みす)てるわけにはいかないからね。
 そういった気持(きも)ちで必死(ひっし)(たす)()した。
 それが、()(つな)がる(こと)だとは(だれ)(おも)ってなかったからね。
 だから、フラッシュシンドロームっていうのは、(かな)しいことだけど、
 そういう、()なんだ。」
「・・・」

(だい)()納品(のうひん)されたパイプイスを見学(けんがく)させてもらっていた。
パイプイスに(すわ)(かんが)()(だい)()
「・・・あ!!」
2時間(じかん)に1(ほん)しかない、しかも最終(さいしゅう)バスを()()ごしてしまった!

そんな(なか)亮介(りょうすけ)父親(ちちおや)法医学(ほういがく)ゼミに電話(でんわ)()けてくる。
「どういう手違(てちが)いかわかりませんが、どうも、うちの息子(むすこ)
 そちらのゼミに(はい)ってしまったようで。
 すぐに()めさせて、島田(しまだ)教授(きょうじゅ)のゼミに移動(いどう)させます。
 教授(きょうじゅ)にも、そうお(つた)(くだ)さい。」
「いいんですか?本人(ほんにん)はそれで。」と玲子(れいこ)
「ハハハ。()()しただけですよ。
 法医学(ほういがく)本気(ほんき)でやろうと(おも)っているとは到底(とうてい)(おも)えない。」

佳奈子(かなこ)一緒(いっしょ)(ある)亮介(りょうすけ)
(だい)()は、よくやるよな。
 佐川(さがわ)先生(せんせい)強引(ごういん)()()られて法医学(ほういがく)(はじ)めたのにさ。
 あんなに夢中(むちゅう)になってやってるし。
 あーやっぱ、こいつスゲーなって(おも)うとこあるしさ。
 ・・アキも、スゲーと(おも)うよ。」
「え?」
両親(りょうしん)いないのに、必死(ひっし)勉強(べんきょう)して医大(いだい)(はい)って。
 ちゃんと目的(もくてき)()って法医学(ほういがく)(しゃ)目指(めざ)してる。」
「たまたま奨学(しょうがく)(きん)()れただけだよ。」
(おれ)なんてさ、親父(おやじ)()いたレールどおりに医大(いだい)(はい)っただけで、
 目的(もくてき)もビジョンも、(なに)もなかった。
 親父(おやじ)は、(いち)(だい)(いま)病院(びょういん)(つく)って、スゲーなって(おも)う。
 でも、(おれ)には(あと)()ぐなんて無理(むり)だなって(おも)った。
 (こわ)くなったんだよ。()きている患者(かんじゃ)さんと()()うのがさ。
 だから法医学(ほういがく)にしたんだ。」
「え?」
(わら)っちゃうくらい(うし)()きだろ。
 法医学(ほういがく)は、()きている人間(にんげん)()()わなくて()む。
 それだけの理由(りゆう)でこの(みち)目指(めざ)してるバカなんてさ、多分(たぶん)世界中(せかいじゅう)(さが)しても
 (おれ)しかいないと(おも)うよ。」
「・・・(わたし)だって、本当(ほんとう)法医学(ほういがく)でよかったのかなって(おも)うことあるよ。
 ずっと()りたかった15(ねん)(まえ)のことだって、結局(けっきょく)わからないままだった。」
「・・・」

亮介(りょうすけ)研究(けんきゅう)(しつ)(もど)ってくる。
(あきら)(たいら)たちはサンプルにコーヒーをこぼしてしまい、
蕪木(かぶらき)手伝(てつだ)っていたのだ。
(おれ)手伝(てつだ)うからさ。
 分析(ぶんせき)結果(けっか)()るの、3(にち)()っているんだろ?この遺族(いぞく)
 (はや)()わらせて、蕪木(かぶらき)さんに、もう一回(いっかい)アキの(かあ)ちゃんの分析(ぶんせき)(たの)みたいんだ。
 アキはさ、()りたいって(おも)(つづ)けて、15(ねん)()っているんだよな・・。
 いい加減(かげん)()ちすぎだろ。」
その様子(ようす)()ていた蕪木(かぶらき)は・・。

よく(あさ)佳奈子(かなこ)がゼミにやって()ると、母親(ははおや)軍手(ぐんて)分析(ぶんせき)がされていた。
徹夜(てつや)作業(さぎょう)()えた亮介(りょうすけ)たちがソファーで(ねむ)っている。

工場(こうじょう)のソファーで(ねむ)(だい)()携帯(けいたい)()る。
「もしもし?なんだアキかー。
 どうした?」
「お(かあ)さんの手袋(てぶくろ)についていた成分(せいぶん)、」
(たよ)んだけどダメだったんだろ?」
(いま)()たら、(つくえ)分析(ぶんせき)結果(けっか)()いてあったの。
 蕪木(かぶらき)さんがみんなと一緒(いっしょ)徹夜(てつや)でやってくれたみたい。」
「そっか!」
「データ()()げるね。」
「ちょっと()って。いいよ。」
(てつ)やその()金属(きんぞく)(へん)。それとアクリル(けい)ポリマ。」
「アクリル(けい)ポリマーって(なん)?」
「シールの粘着(ねんちゃく)部分(ぶぶん)とかに使用(しよう)されている成分(せいぶん)。」
「・・・」
「どれも、工場(こうじょう)にありそうなものだし、()がかりになりそうなもの
 ないみたいだね。
 もう(むかし)(こと)だし、」
「・・・パイプイス!」
「ね、()いてるの?」
「アキ!(いま)からこっち(らい)いよ。」
(なに)で?」
「いいから(はや)く!(いそ)がないとバス2時間(じかん)()たされるぞ!」
()(おく)れた(ひと)()われたくないんですけど!」
電話(でんわ)()れてしまう。
(なん)?ムカツク!」

玲子(れいこ)亮介(りょうすけ)()こし、(そと)(はな)す。
有名(ゆうめい)なお(とう)さんを()つと大変(たいへん)よね。
 こうなること、(なん)となくわかってたんでしょ?」
「・・・」
「でもあなたにはお(れい)()わなきゃね。」
「え?」
「あなた(たち)がゼミに(はい)ってきたときにね、佐川(さがわ)先生(せんせい)と、何人(なんにん)(のこ)るか
 ()けをしたの。
 佐川(さがわ)先生(せんせい)は、最後(さいご)まで5(にん)全員(ぜんいん)(のこ)るって()けたから、これで(わたし)()けは
 なくなった。」
()ってください。
 (おれ)(たの)しくなってきちゃったんですよね、法医学(ほういがく)
 だから・・このゼミやめません。
 玲子(れいこ)さんには、(もう)(わけ)ないんですけど、最後(さいご)まで(のこ)りますから。」
(わたし)じゃなくて、もっと()うべき(ひと)がいると(おも)わない?
 お(とう)さんとちゃんと(たたか)えるの?」
「・・・」

(だい)()佳奈子(かなこ)()れて、駄菓子(だがし)やたかしへ。
「こんにちは。」
「あ!(また)()たの?」
「これ()たりました。」
「はい。」
呑気(のんき)()(もの)する(だい)()苛立(いらだ)佳奈子(かなこ)
「こいつ(おこ)りっぽいと(おも)いませんか?」と(だい)()
「そうかな。」
何事(なにごと)も、きっちりしないと()がすまないタイプなんですよね。」
「そっちがだらしなさ()ぎるんでしょ!」
「・・やっぱり、(ゆき)さんに()たのかなって。」
「え?」
「・・・」
「もしかしたらなんですけど、15(ねん)(まえ)2月(にがつ)7(にち)一番(いちばん)最後(さいご)に、
 (ゆき)さんと(はな)したの、八木(やぎ)さんじゃありませんか?」
「・・・」

「あの()八木(やぎ)さんがパイプイスを納品(のうひん)()った会社(かいしゃ)()ってきたんです。
 八木(やぎ)さんが納品(のうひん)(さき)(おとず)れた時間(じかん)が、記録(きろく)(のこ)っていました。
 21()()ぎです。
 工場(こうじょう)から、(くるま)で10(ふん)(ほど)距離(きょり)
 でも、工場(こうじょう)のタイムカードには、18()以降(いこう)(のこ)っている工員(こういん)(ほう)
 いませんでした。」
「・・(めし)でも、()べてたのかもしれない。」
納品(のうひん)()ませるのにそんなことするでしょうか。
 納品(のうひん)したパイプイスを()せてもらったんです。
 そしたら、イスの(うら)()ってある検品(けんぴん)シールの筆跡(ひっせき)が、
 一人(ひとり)じゃありませんでした。
 検品(けんぴん)仕事(しごと)をしていたのは、担当(たんとう)である八木(やぎ)さんだけだったはずです。
 でもそのシールには、(ゆき)さんの筆跡(ひっせき)がありました。」
「え・・」と佳奈子(かなこ)
「あの()(ゆき)さんは工場(こうじょう)(のこ)って、八木(やぎ)さんと一緒(いっしょ)残業(ざんぎょう)してたんだと
 (おも)うんです。
 (ゆき)さんがあの()()けていた手袋(てぶくろ)から、検品(けんぴん)シールを()るときに使(つか)
 ノリの成分(せいぶん)()つかりました。
 (ゆき)さんが、普段(ふだん)作業(さぎょう)では(けっ)して(さわ)らないものですよね。」
「・・・あの()・・(たし)かに・・(ゆき)さんと最後(さいご)まで工場(こうじょう)にいました。」

納品(のうひん)()かうトラックの荷台(にだい)()づく雪子(ゆきこ)
パイプイスには間違(まちが)って(ふる)検品(けんぴん)シールが()られていた。
そのまま納品(のうひん)()かおうとする八木(はちぼく)に、
(あきら)めたらその(ひと)人生(じんせい)はそこでおしまいだって、
 どっかの(えら)(ひと)()ってるでしょ。
 まあいいか、これでいいよが堕落(だらく)(はじ)まり!
 これは・・小学校(しょうがっこう)(とき)担任(たんにん)言葉(ことば)!」
雪子(ゆきこ)八木(はちぼく)一緒(いっしょ)(なお)(はじ)めた。

(ゆき)さん、(ぼく)()使(つか)わせないように、最後(さいご)まで(たの)しそうに・・
 作業(さぎょう)してた。
 (かえ)ってくるまで、1時間(じかん)ぐらい()かっちゃって。
 もう(かえ)ったかなと(おも)ったら、(ゆき)さんの自転車(じてんしゃ)(のこ)ってたんだよ。」

八木(やぎ)工場(こうじょう)(もど)ると、雪子(ゆきこ)(てつ)パイプの下敷(したじ)きになっていた。
(ゆき)さん!!(ゆき)さん!!大丈夫(だいじょうぶ)ですか!?」
「あ・・八木(やぎ)(くん)・・イタタタタ・・」
大丈夫(だいじょうぶ)ですか!?」
大丈夫(だいじょうぶ)(きゅう)(たお)れてきて・・びっくりしちゃった。」

病院(びょういん)()ったほうがいいんじゃないんですか?」
(ほね)()れてないし、平気(へいき)平気(へいき)!湿布(しっぷ)でも()っておけば大丈夫(だいじょうぶ)よ。」
(くるま)あるし、(おく)っていきますよ。」
「あんたもしつこいわねー。
 (わたし)、うちに電話(でんわ)してから(かえ)るから、さき(かえ)って。
 ほら(はや)く!(おく)さん()ってるんでしょう?」
今日(きょう)は、本当(ほんとう)にありがとうございました。」
「じゃ、明日(あした)またね。」
「お(つか)(さま)でした。」
「お(つか)(さま)
 おやすみ。」
失礼(しつれい)します。」

「まさか・・あのまま(いき)()()るなんて(おも)ってなくて・・。
 余計(よけい)仕事(しごと)無理(むり)したせいで・・心臓(しんぞう)発作(ほっさ)()こしたんじゃないかと
 (おも)った・・。(こわ)かった・・。
 名乗(なの)()られなくて・・・本当(ほんとう)に・・(もう)(わけ)ないと(おも)っています・・。」
()きながら謝罪(しゃざい)する八木(やぎ)
正直(しょうじき)・・もっと(はや)()ってくれれば、()かったのにと(おも)います。
 15年間(ねんかん)・・()りたくてずっと()っていましたから。」
「・・・」
「でも・・八木(やぎ)さんのせいじゃありません。
 (はは)(おそ)らく、クラッシュシンドロームという症状(しょうじょう)で、
 ()くなったんだと(おも)います。
 それがわかっただけでも、感謝(かんしゃ)しています。
 (はな)してくれて、ありがとうございました。」
「・・・」
一番(いちばん)最初(さいしょ)にここに()(とき)(おも)ったんです。
 お菓子(かし)名札(なふだ)数字(すうじ)が、(ゆき)さんの数字(すうじ)()(かた)だなって。
 (ゆき)さんの、7の数字(すうじ)()(かた)特徴(とくちょう)ありますよね。
 (よこ)(ぼう)がチョンと(はい)って。
 八木(やぎ)さんが()いたほうの検品(けんぴん)シール、途中(とちゅう)までは普通(ふつう)の、
 7だったんですね。」と(だい)()

それは雪子(ゆきこ)が、八木(はちぼく)()く7と1が(まぎ)らわしいので
(よこ)(ぼう)()れるよう(おし)えたのだった。
社会(しゃかい)(じん)になってから()()はね、自分(じぶん)のためじゃなくて、
 (ひと)()んでもらうための()なのよ。」

「あの()以来(いらい)、7を()くたび・・(ゆき)さんのこと(おも)()しちゃって・・。」
八木(やぎ)はそう()い、(かた)()るわせた。

工場(こうじょう)
(じん)(れい)()佳奈子(かなこ)
機械(きかい)(わき)(だい)()(なに)かを()ている。
(なに)してるの?」と佳奈子(かなこ)
(ひと)つだけどうしても()になっていたことがあったんだけど、
 (おも)ってたとおりだった。」
(なに)が?」
(ゆき)さん結構(けっこう)仕事(しごと)サボってたんだな。」
「え?」
「あんたね、(ゆき)さんを侮辱(ぶじょく)するようなことを()ったら、承知(しょうち)しないよ。」と(じん)
「だってこれ。機械(きかい)のマニュアルが()いてあるのかと(おも)ったら、
 こんなもん()いてあったんですよ。」
(だい)()がノートを佳奈子(かなこ)(わた)す。
それは、佳奈子(かなこ)のアルバムだった。
本当(ほんとう)は、どんな(おや)よりも、()になっていたんだな。
 授業(じゅぎょう)参観(さんかん)運動会(うんどうかい)も、本当(ほんとう)()きたくて()きたくて。
 たまらなかったんだよ、きっと。」
「そうだと(おも)うよ。(むすめ)の、後姿(うしろすがた)しか(うつ)っていない写真(しゃしん)まで、
 わざわざ()(おや)は、(ゆき)さんぐらいしかいなかったと(おも)うよ。」
「・・・」
(じん)さんから、(ゆき)さんが、ここで一人(ひとり)(ひる)ごはん()べてたって
 ()いたとき、不思議(ふしぎ)(おも)ったんだよ。
 みんなの中心(ちゅうしん)にいたような(あか)るいお(かあ)さんが、どうしてだろうって。
 きっとここで、写真(しゃしん)()ながら弁当(べんとう)()べてたんだな。」
「・・・本当(ほんとう)はわかってた。
 一緒(いっしょ)にいれなくて、一番(いちばん)(さび)しい(おも)いをしているのは、
 お(かあ)さんだってこと・・。」

雪子(ゆきこ)子供(こども)たちに弁当(べんとう)(わた)(とき)にこう()っていた。
別々(べつべつ)場所(ばしょ)にいても、今日(きょう)(さん)(にん)(おな)じお弁当(べんとう)()べるんだぞ!」

(はは)笑顔(えがお)(おも)()し、号泣(ごうきゅう)する佳奈子(かなこ)・・。


雪子(ゆきこ)残業(ざんぎょう)(なぞ)、そして、アザのあと。
15(ねん)(まえ)警察(けいさつ)子供(こども)たちに説明(せつめい)してあげることは出来(でき)なかったのかな・・。
八木(はちぼく)にもう(すこ)勇気(ゆうき)があれば、佳奈子(かなこ)はこんなにも(なが)(あいだ)
(くる)しむことはなかったのに・・。

(だい)()のお(かげ)佳奈子(かなこ)は、15(ねん)(まえ)(はは)職場(しょくば)のみんなにとても(した)われて
いたことと、責任(せきにん)(かん)がとても(つよ)かったこと、そして、(むすめ)たちのことを
とてもとても(あい)していてくれたことを(さい)確認(かくにん)することが出来(でき)ました。